こんな風に不登校の始まりは、いつも突然やってくるように感じます。
子どもが学校へ行けなくなったとき、多くの保護者の方がまず感じるのは「戸惑い」と「不安」です。
「どうして?」「何があったの?」「このまま行かなくなったらどうしよう」
そんな気持ちでいっぱいになるのは当然のことです。
そして同時に、「無理にでも行かせたほうがいいのでは?」「甘やかしてはいけないのでは?」と、自分の対応が正しいのか悩む方も多いでしょう。
しかし、不登校の初期にどう対応するかで、その後の回復のスピードは大きく変わります。
そこで今回は、不登校の初期にご家庭でどんな風に対応すればいいかについてお話していきます。
Contents
不登校の初期に親が感じる気持ちってどんなもの?
「まさかうちの子が…」という動揺
不登校の始まりは、どの家庭にも“突然”訪れるように見えます。
前の日まで笑顔で登校していたのに、翌朝「行きたくない」「お腹が痛い」と言い出す。
最初は軽い体調不良や気分の問題だと思い、「今日はたまたまだろう」と受け止める親がほとんどです。
しかし、それが2日、3日と続くうちに、「もしかして本当に行けないのかも」と不安が現実味を帯びてきます。
そして、ほとんどの親が次のような思いに揺れます。
- どうして急に?
- 私の育て方が悪かったのでは?
- 甘やかしてしまっているのかもしれない
こうした“自分を責める気持ち”は非常に強く、不登校の初期に親が最も苦しむ部分です。
けれど、心理学的に見ると、これは自然な防衛反応でもあります。
突然の出来事に対して「原因を探して納得しようとする」心の働きは、自分の不安を整理するためのもので決して親の弱さではありません。

親の焦りが子どもに伝わるメカニズム
不登校初期の大きなポイントは、親の不安と焦りが子どもにそのまま伝わりやすいということです。
親子のように心が深く結びついた関係では、親の緊張や焦りを、子どもは言葉よりも早く“空気”で感じ取ります。
親が「どうして行かないの?」「早く戻ってほしい」と強く思うほど、子どもは無意識のうちに「親をがっかりさせている」と感じ、さらに登校へのハードルを高くしてしまうことがあります。
一方で、親が少し落ち着いて、「今は休む時期なんだね」「大丈夫、一緒に考えよう」と伝えられると、子どもは安心して自分の気持ちを整理する力を取り戻し始めます。
親の落ち着きが、子どもの安心の基盤になります。

子どもも「どうしていいかわからない」状態にある
不登校の初期段階で、子ども自身もまた混乱しています。
「学校に行けない自分」が理解できず、頭では「行かなきゃ」と思っていても、心と体が動かない――。
脳と心がストレスでいっぱいになり、「逃げる」か「止まる」しかできないほど疲れているのです。
このとき大切なのは、子どもが「行けない自分を責めないようにする」そして、親が「今は休んでいい」と伝えてあげることです。
カウンセリングの現場でも、最初の面談で親が「少し休ませようと思っています」と話すと、子どもがホッとしたように表情を緩める場面をよく見ます。
「行けないのはダメなこと」ではなく、「今は心を回復させるために止まっている」という認識が、子どもに安心と自己受容をもたらします。

不登校初期によくある“間違った対応”
不登校が始まったばかりの時期、多くの親は「何とか早く学校に戻してあげたい」と思います。
これは親として当然の願いではないでしょうか。
しかし、その焦りが少しだけ先走ってしまうと、子どもの心をさらに追い詰めてしまうことがあります。
ここでは、支援現場でよく見られる「初期にやりがちな対応」と、その背景にある心理をお話しします。
① 無理に学校へ行かせようとする
不登校初期に最も多い対応が、「とにかく学校へ行かせよう」とするものです。
朝、布団をはがしたり、車で送ろうとしたり、「一日だけでも行ってみようよ」と説得したり…。
一見、前向きなサポートのように見えますが、心が限界に近い子どもにとっては、その言葉が「理解されていない」「否定された」と感じられることがあります。

② 叱る・説得する・比較する
- 「どうして行かないの?」
- 「甘えてるんじゃないの?」
- 「お母さんだって仕事頑張ってるのに」
こうした言葉は、親の心の中にある“恐れ”や“不安”から出てくることが多いです。
しかし、子どもにとっては「責められた」と受け取りやすく、自己否定感を強めてしまいます。

③ 学校や友人関係の情報を詮索しすぎる
不登校の原因を突き止めたいと思うのは、親として当然の気持ちです。
しかし、
- 「何があったの?」
- 「誰かに何か言われた?」
- 「いじめ?」
- 「先生が嫌なの?」
こんな風に、質問を重ねてしまうと、子どもは尋問されているように感じて心を閉ざしてしまうかもしれません。
不登校初期の子どもは、自分の気持ちを言葉にできないことが多いです。
学校に行けない理由が「いじめ」や「勉強のつまずき」など、単一の原因でないことも多く、「何となく行けない」「朝になると苦しい」としか言えないケースも少なくありません。
それを言葉で説明できないために、さらに「わからない自分」を責めてしまうこともあるため、あまり聞きすぎないことも大切です。

初期対応に大切な心構え
不登校の初期において、最も優先すべきことは、「学校に戻すこと」ではなく「安心を取り戻すこと」です。
心が疲れ切った状態では、どんな励ましの言葉も「プレッシャー」にしか聞こえません。
だからこそ、まずは「安心して呼吸できる場所」をつくることが、回復への第一歩になります。
① まずは休ませて“安全基地”をつくる
子どもが登校できなくなったとき、家庭が安全基地の役割を果たすことが何より大切です。
学校がつらいと感じたとき、「家に帰れば安心できる」「責められない」と思えるかどうかが、その後の立ち直りを大きく左右します。
- 「今日は休もうか」と安心して言える雰囲気をつくる
- 「休んでいる子ども」を責めないようにする
- 「何もしていない」時間も心の回復に必要だと理解する

② 感情を否定せず、共感的に受け止める
「行きたくない」「疲れた」「どうでもいい」
こうした言葉を聞くと、親としては心配でたまらないと思います。
しかし、それを「そんなこと言わないで」「頑張ろうよ」と否定してしまうと、子どもは「わかってもらえない」と感じて心を閉ざします。
- 「そう感じているんだね。」
- 「つらかったんだね。」
- 「行きたくないって思うほど、学校が大変だったんだね。」
こうした言葉は、“理解してくれている”という安心を生み出します。
感情を吐き出せることで、子どもは少しずつ整理がつき、「今の自分を認めてもらえた」という自己肯定感が戻り始めます。
③ 「何もしない時間」を責めない
不登校初期には、子どもが一日中ゲームをしたり、ぼーっとしたり、何もしていないように見える時間が増えます。
しかし、その「何もしない時間」が、実は心のエネルギーを回復させるための大切な期間です。
心理的ストレスが高まった脳は、“過剰な緊張状態”から抜け出すまで時間がかかります。
この時期に無理に勉強や外出を促すと、逆にストレスが再燃してしまうことがあります。
子どもが少し落ち着いたらできること
不登校の初期に「安心」を取り戻せると、子どもは少しずつ笑顔を見せたり、会話を増やしたり、ゲームやテレビの話をするようになります。
この時期こそ、次のステップへの準備期間です。
しかし、「落ち着いた=すぐ登校できる」と思ってしまうと、せっかく回復してきた心を再び緊張させてしまうことがあります。
ここでは、家庭でできる3つの関わり方を紹介します。
① 生活リズムを“ゆるく整える”
心の回復は、体のリズムが整うことで加速します。
しかし、いきなり「朝7時に起きよう」「夜10時に寝よう」と決めても、うまくいかないことがほとんどです。
脳の覚醒リズムは「段階的に」戻す必要があります。
臨床的には、まず起床時刻を30分ずつ前にずらすなどの小さな工夫が有効です。
- 朝、カーテンを開けて太陽光を浴びる(体内時計をリセット)
- 朝食の時間を一定にする(栄養と生活リズムの安定)
- 夜のスマホ・ゲーム時間を「制限」ではなく「相談」で調整
押しつけずに提案することで、子どもは「自分が決めた」と感じ、内発的に行動を変えやすくなります。
② 家庭で小さな成功体験を積ませる
不登校が長引く理由のひとつに、「自分は何もできない」という自己効力感の低下があります。
そのため、学校以外の場で「できた!」という経験を重ねることが大切です。
ただし、それは難しいことではなく、家庭の中にある日常的な小さな役割で十分です。
- 家事の一部を任せる(食器洗い・掃除・洗濯たたみなど)
- 簡単な料理を作る(オムレツ・味噌汁など)
- 家族でゲームをする・ペットの世話を担当する
- 買い物に一緒に出かける(外出リハビリにもなる)

③ 学校とのつながりを保つ
子どもが少し元気を取り戻しても、すぐに「学校へ行こう」と促すのは時期尚早です。
大切なのは、学校に戻すより学校とつながり続けるという意識です。
- 担任の先生やスクールカウンセラーと、親が定期的に連絡を取る
- 子どもが負担を感じない範囲で、プリント・手紙・給食メニューなどを受け取る
- 「行事の写真を見てみる」「先生の声を聞く」など、間接的な関わりから始める
支援機関につながるタイミングはいつがいい?
不登校の初期対応で最も大切なのは、「家庭だけで抱え込まないこと」です。
多くの親が「まだ自分たちで何とかできるかも」と考え、相談を先延ばしにしてしまいます。
しかし、不登校が長期化する背景には、親が一人で抱え込んでしまったことが少なくありません。
支援機関に早めにつながることは、「解決を急ぐため」ではなく、“親と子の安心を守るため”の行動です。
① 学校に相談しても改善が見られない場合
まず最初に相談すべき相手は、担任の先生・養護教諭・スクールカウンセラー(SC)など、学校内の支援チームです。
しかし、どんなに先生が熱心でも、状況がすぐに好転しないこともあります。
そのような場合は、「学校外の支援」も検討する時期です。
文部科学省が全国に設置を進めている公的支援機関で、「教育支援センター」や「適応指導教室」と呼ばれています。
ここでは、登校に代わる学習や体験活動を通じて、少しずつ外の世界とつながる練習ができます。
在籍校との連携もあるため、出席扱いになることも多いです。
学校や行政の支援が合わない場合、民間のフリースクールや不登校支援NPOの利用も選択肢に入ります。
それぞれに特色があり、
- 学習中心型(個別学習・自習室タイプ)
- 体験活動中心型(農業・アート・地域交流など)
- オンライン型(在宅学習やグループワーク)
など、子どもの状態に合った場所を選ぶことができます。
② 家族関係が悪化してきたとき
不登校が続くと、家庭の空気が重くなりやすいです。
「言っても聞かない」「いつまでこの状態が続くの?」
そんなやり取りが増え、親子関係がぎくしゃくしてくることがあります。
この段階での相談は、子どもだけでなく家族全体の支援が目的になります。
- 学校に所属するスクールカウンセラー(SC)
- 市区町村の家庭児童相談員
- 教育委員会の教育相談センター
こうした機関では、親が話をすることで「どう関わればいいか」が整理でき、家庭の空気を少しずつ穏やかに戻す手助けが受けられます。
③ 親自身の不安が限界に近いとき
不登校の子どもを支える親は、「見守る」「待つ」「我慢する」といった“消耗する支援”を続けています。
夜眠れない、涙が出る、イライラが止まらない。
そんな状態になったら、親自身の支援が必要なサインです。
- カウンセリング(公的機関・民間どちらでも可)
- 親の会・ピアサポートグループ(同じ立場の保護者との交流)
- 心療内科・メンタルクリニック(不眠や不安が強い場合)
おわりに
子どもが学校に行けなくなったとき、親が感じる不安や焦りは、とても自然な感情です。
「どうすればいいかわからない」「自分のせいでは?」
そんな気持ちになるのは、子どもを大切に思っているからこそです。
けれど、不登校の初期に本当に必要なのは、「子どもを変えること」ではなく、「子どもを安心させること」です。
- 「学校に行かせること」よりも「子どもを安心させること」を大切にする
- 「問い詰める」よりも「聴く」を意識する
- 「焦る」よりも「信じて待つ」
この3つの視点を意識して子どもと接することで、子どもの気持ちも安定していきます。
不登校の子どもたちは、それぞれ異なる背景とペースで回復していきます。
- 数週間で登校を再開する子
- 数か月~数年かけて少しずつ生活を整える子
- 学校以外の居場所を見つけて成長していく子
どの道を進んでも、その子なりの「正解」の道で、人と比べる物ではありません。
「学校に戻る=成功」ではなく、「自分らしく生きられる=回復」
この視点をもてると、親も子もずっと楽になります。
不登校は、誰にでも起こりうる“心のサイン”です。
焦らなくて大丈夫なので、親子の「安心」を取り戻すことから始めてみてください。
今回も読んでいただきありがとうございました。
※この記事には一部生成AIの文章が使われています。










