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現役スクールカウンセラーの子育て応援ブログ
カウンセリング

自分の気持ちを上手に伝えたい!相手に伝わるコミュニケーションをするにはどうすればいいの?

普段の相談の中で、時折

  • 「友達からの誘いをうまく断れなくてトラブルになってしまった」
  • 「自分の意見ばかり言ってしまって、友達が離れてしまった」
  • 「子どもが自分の気持ちを言葉で伝えることが苦手」

のような話が出てくることがあります。

「本当は言いたいことがあるのに、相手のことを考えると言えなくなってしまう」

今回はそんな時に役立つ技法、アサーションについてお話ししていきます。

そもそもアサーションってなんだろう

アサーションという言葉を聞いたことはあっても、どんなものだか知っている人はあまり多くないのではないでしょうか。

「自己主張」と表現されることもありますが、それだと好き勝手に自分の主張をすることのようにも感じてしまいます。

アサーションの本来の意義は、自分も相手も大切にするための表現方法にあります。

アサーションの中では、自己表現のタイプを

  1. 非主張的自己表現
  2. 攻撃的自己表現
  3. アサーティブな自己表現

の3つにわけて考えます。

①非主張的自己表現

自分の気持ちや考えを言わずに、言いたいことを我慢して結果として相手の言うことを聞いてしまう状態を非主張的自己表現と言います。

  • 自分を抑えて相手の言いなりになってしまう
  • 引っ込み事案で思うように自分の言いたいことを言えない
  • すぐに言葉が出てこないため、相手の勢いに押されてしまう

こうしたことが非主張的自己表現のタイプの人の特徴でもあります。

自分の気持ちがないわけではないのに、相手に伝えることができずに結果的に自分が困る事態に陥ってしまうのがこのタイプの困ったところです。

「相手に嫌われたくない」

という思いからこうした自己表現をしている場合も多いので、ストレスをため込みやすく注意が必要です。

②攻撃的自己表現

上記のタイプとは異なり、自分の気持ちを相手に伝えることはできますが、自分の言い分を一方的に押し付けてしまう状態を攻撃的自己表現と言います。

  • 自己中心的で相手の都合を考えずに、自分の主張を通そうとする
  • 自分の意見と違うものは受け入れられず、怒鳴って自分の主張を押し付ける
  • 相手に対して命令するような物言いになる

こうしたことが攻撃的自己表現のタイプの特徴でもあります。

自分の意見を通そうとするあまり、一方的な主張や押しつけがましい主張となってしまい、相手とのトラブルが頻繁に発生してしまうのがこのタイプの困ったところです。

「自分が絶対に正しい」

という思いからこうした自己表現をしている場合も多いので、対応する側のストレスが溜まりやすいので注意が必要です。

③アサーティブな自己表現

非主張的自己表現や攻撃的自己表現にならずに、自分の考えや気持ちをごまかさずに相手を自分も相手も大切にできているかを考えて伝えられる状態をアサーティブな自己表現と言います。

  • 誘われても都合が悪ければ相手を傷つけないように断れる
  • 代わりの案を提案することができる
  • 相手の気持ちも大切にしながら、自分の考えを伝えられる

こうしたことがアサーティブな自己表現のタイプの特徴でもあります。

コミュニケーションは相手とのやり取りがあって成立するものなので、こうしたアサーティブな自己表現ができるとストレスが軽減されます。

アサーションは自分も相手も大切にする自己表現!

自分の気持ちを場に合った伝え方で表現できるとお互いハッピー!

では、どのようにアサーティブな自己表現を身に付けていけばいいのでしょうか。

どういう風に相手に伝えるといいの?

ここでは、子ども達がよく悩む場面についていくつか具体例を出してお話ししていきます。

  1. 遊びの誘いを断る時
  2. 相手にお願いしたい時
  3. 嫌なことをされるのをやめてほしい時

今回はこの3つのパターンの時に、どのように伝えるといいのかを考えます。

①遊びの誘いを断る時

学校では、休み時間や放課後に友達から遊びの誘いを受けることも少なくありません。

誘いに乗れる時はいいのですが、どうしても都合が悪い時もあるのではないでしょうか。

そんな時、どんな風に相手に断ったらいいのか悩んでしまう子どもをよく見かけます。

非主張的自己表現タイプの断り方

「うーん…どうしようかなぁ…」

「今日はちょっと…うーん…」

はっきりと断るわけでも受け入れるわけでもないこの答え方では、友達も困ってしまいます。

もしかしたら、「自分のことが嫌いだからはっきり言えないのかもしれない」と誤解されてしまう危険性もあります。

攻撃的自己表現タイプの断り方

「無理!」

「急に誘うなよ」

せっかく誘ってくれた友達に対して、強い言葉で断ってしまうこの答え方では、友達を傷つけてしまいかねません。

こうした断り方を続けていると、「あの子は嫌な言い方をするから誘わないようにしよう」となってしまう危険性もあります。

アサーティブな自己表現タイプの断り方

「行きたいけど、今日は塾があって行けないから明日誘って」

「その場所だと、○○が苦手だから別の場所ならいいよ」

誘いをそのまま受け入れるのは難しいことを伝えつつ、お互いが納得できそうな代替案を提案するこの答え方なら、自分も友達も傷つかずに済みます。

こうした断り方なら、「今日はダメでも明日また誘ってみようかな」と友達も考えてくれるのではないでしょうか。

②相手にお願いしたい時

消しゴムや教科書を忘れてしまったから友達に借りたい、荷物を運ぶのを少し手伝ってほしい、こんな場面が学校の中ではあるのではないでしょうか。

相手に対してお願いしたい時、どんな風にお願いしたら相手も気持ちよく協力しやすくなるか悩んでしまいます。

非主張的自己表現タイプのお願いの仕方

「えっと…消しゴム…」

「あの…荷物がちょっと…」

これでは友達も何をしてほしいのかがわからずに困ってしまいます。

「僕・私が困っているのを察してほしい」という気持ちが強いとこうした表現になりやすいです。

この表現では、「何をしてほしいかはっきり言ってほしい」と友達から思われてしまうかもしれません。

攻撃的自己表現タイプのお願いの仕方

「消しゴム早く貸せよ」

「荷物多いの見てわかるんだから手伝えよ」

何をしてほしいのかはよくわかりますが、これでは友達も気持ちよく手伝いたくないのではないでしょうか。

「僕・私が困ってるんだから助けるのが当たり前」という気持ちが強いとこうした表現になりやすいです。

この表現では、「いつも命令してくるからあの子とは一緒にいたくない」と友達から思われてしまうかもしれません。

アサーティブな自己表現タイプのお願いの仕方

「消しゴム忘れちゃったから、使い終わったら貸してほしいな」

「荷物が多くて大変だから、もしよければ手伝ってくれると嬉しいな」

何をしてほしいかを明確にして、相手にも選択できる余地を与えているのがわかるのではないでしょうか。

こうしたお願いの仕方なら、友達も「困っているなら助けてあげよう」という気持ちになってくれるかもしれません。

③嫌なことをやめてほしい時

学校の中では、友達同士のコミュニケーションでからかいやいじりのようなやり取りが行われる場面が数多く存在します。

お互いに納得した上でのやり取りであればいいのですが、中には嫌なことを相手に言えずに我慢してしまっている子も少なくありません。

非主張的自己表現タイプの止め方

「そんなこと言わなくても…いや、何でもないよ」

「(相手に聞こえない声で)嫌だなぁ…」

こんな風に嫌なことをされてもはっきりと言えずに困っている子を時折見かけます。

表情も苦笑いのような感じではありますが、相手からすると「笑っているから、相手も楽しんでいるはず」と勘違いをされてしまう危険性もあります。

攻撃的自己表現タイプの止め方

「やめろよ!」

「ふざけんな!」

時にはこのように強く言わなければならない場面もありますが、こんな風に強く言われたら相手からすると「ちょっとふざけてただけなのに大げさだな」と引かれてしまう可能性もあります。

アサーティブな自己表現タイプの止め方

「その言い方だと傷つくからやめてほしいな」

「そういうことをされるのは嫌だな」

ちょっと弱いように感じるかもしれませんが、普段のやり取りの中ではこれぐらいの言葉で相手に伝えた方が伝わりやすいです。

このいい方であれば、相手からも「嫌な気持ちにさせて悪かったから、次からは気を付けよう」と考えてくれるかもしれません。

子どもにアサーションを教える時に役立つ本

上記以外の場面でも、どんな風に答えたらいいのかわからないと困ってしまうことがあるかと思います。

そんな時に、


この本を使ってご家庭で一緒に取り組んでいただくのもおすすめです。

アサーションはすぐに身に付く技術ではなく、どうしても毎日の練習が必要です。

そんな時に、この本を使って一緒に練習すると取り組みやすくなるかと思います。

この本以外にも、アサーションとは直接関係ないのですが、


この本も友達関係の悩みについて考えるのにおすすめです。

絵も多くて読みやすいので、低学年の子どもでも一人で読めます。

おわりに

今回は、アサーションについてお話ししていきました。

相談の中では、アサーションという言葉は使わずに

「どんな言葉だったら、相手を嫌な気持ちにさせないで自分の気持ちを伝えられそうかな」

といった形で一緒に考えています。

すぐには答えられない子も、こちらがヒントを出しながら促していくと、自分が言えそうな言葉で相手に伝えたい言葉を考えられるようになっていきます。

どんなに的確な言葉でも、その子自身が言えなければ意味がありません。

なので、ご家庭でも子ども自身がその言葉を言えそうか、という観点で一緒に考えていただけるといいのではないでしょうか。

その際には、ご家庭の中で子どもがその言葉をスムーズに言えるように練習していただけると、実際に使う場面でも言いやすくなるのでおすすめです。

今回も読んでいただきありがとうございました。