学校で勤務している際に、先生から
「最近の子は我慢がきかなくなっているように感じる」
と話を聞くことが時折あります。
相談の中でも
「子どもが感情を爆発を我慢するにはどうしたらいいのか」
と話題に出ることもあります。
そこで今回は子どもの感情をコントロールするためのトレーニングである、SST(ソーシャルスキルトレーニング)についてお話ししていきます。
Contents
そもそもSSTってなに?
SSTとはSocial Skill Training(ソーシャルスキルトレーニング)の略称で、直訳すると社会的な技術という意味になります。
それだと少しわかりにくいので、私は相談の際には「人と上手にかかわるために必要な力」や「コミュニケーション力」といった言葉で説明しています。
私たちは、社会で生きていく際に必ず人とコミュニケーションをとらなければなりません。
コミュニケーションには、自分の思いを正確に伝えて、相手の思いをくみ取って受け止めることが必要不可欠です。
そのためには、言葉のチョイスや表情、ジェスチャーなどさまざまな方法を使ってお互いの思いを伝えあいくみ取っていくことが求められます。
しかし、これらの方法は自然と身に付くものではなく、ある程度の経験が必要です。
最近の子どもはこうしたコミュニケーションの経験が少なくなってきていることが問題視されているので、SSTと呼ばれるコミュニケーション力を高めるトレーニングが注目されるようになりました。

SSTは道徳の授業で学ぶもの?
SSTの話をして、よく誤解されるのは道徳の授業で人の気持ちを思いやることを学んでいるのでそれで十分であると言われることです。
道徳とSSTの違いは、
- 道徳:思いやりやマナー、ルールなどの考え方を学ぶ
- SST:日常生活の中で必要な声のかけ方や行動を学ぶ
という点にあります。
道徳の授業だと、「お年寄りには席を譲る」という考え方を授業で学ぶだけで終わってしまいます。
しかし、SSTでは「お年寄りに席を譲るためにはどう声かけをしたらいいのか」と行動の仕方を考えて、実際に声かけの練習もします。
道徳の授業で考え方を学んでも、実際に行動に移せなかったら意味がありません。
SSTのように実際の声かけや行動の仕方を学んで練習することによって、子どもにも「こうすればいいんだ」という気づきが得られます。

では、家庭でできる取り組みにはどのようなものがあるでしょうか。
子ども達に必要なスキル
今回は、相談の中でよく話題に出てくる
- 相手の気持ちを考える
- 自分の感情をコントロールする
この2つの力に必要なスキルについてお話ししていきます。
①相手の気持ちを考えるスキル
相手の気持ちを考えるためには想像力が欠かせません。
「なんであの子は怒ったのかな」
「どうして泣いているんだろう」
「なんで」や「どうして」を見つけるためには、子ども自身の実体験から想像を膨らませる必要があります。
少子化やコロナ禍などで、集団で集まって遊んだり活動したりする機会が少なくなっている影響からか、そうした実体験が積めなくなっているのも相手の気持ちを考える力が弱くなっている一因だと考えられています。
「自分は○○されて嫌だったことがあるから、もしかしたらあの子も同じ気持ちだったかもしれない」
こんな風に考えられるようになるためには、子どもにもある程度の経験を積んでもらう必要があります。

相手の気持ちを考えるために必要なスキルは、
- 相手を傷つけない言葉の使い方ができる
- 相手の気持ちを具体的な場面から想像できる
- 相手に伝わりやすい表現を考えられる
- 社会生活に必要なマナーやルールがわかる
のようなものになります。
これらの視点を意識して、具体的な場面を取り上げて考えるだけでもいい練習になります。
その際に、親子で実際にやってみると実際の場面でも使いやすいです。

②自分の感情をコントロールするスキル
自分の感情がコントロールできていない子ども、と見られやすいのはすぐにカッとなってしまういわゆる「キレやすい子」ではないでしょうか。
子ども達がキレてしまうのは、単純に怒りが原因ですが怒りの種類にもいろいろあります。
- くやしさ
- 嫉妬
- 我慢
- 不満
- 焦り など
こうしたさまざまな感情が蓄積してしまい、怒りの形で爆発させてしまう子どもが「キレやすい子」と見られてしまう姿を幾度となく経験してきました。

こうした自分の感情をため込んでしまう子どもが、最近は増えてきています。
そこで、自分の感情をコントロールするために必要なスキルは、
- 自分の気持ちに気づくことができる
- 気持ちを言葉で表現できる
- 嫌な気持ちを切り替えることができる
のようなものになります。
子ども達は、今の自分がどんな気持ちかがわかっていないことがよくあります。
なので、まずは「今の自分の気持ちがわかる」ことから始めることが大切です。
自分が今どんな気持ちで、どんな風に体や心に影響があるのかを気づくことから感情のコントロールの練習は始まります。
こうした練習を重ねて、気持ちが爆発しそうになった時に、人や物に八つ当たりしないように目指していきます。

おうちでSSTを実践する時に役立つ本
この本は、先生が授業でSSTを実践する時に使えるワークシートが盛り込まれた1冊です。
それぞれのワークシートの「ねらい」や「解説」がわかりやすくまとめられているので、ご家庭でも使いやすい本になっています。
イラストもかわいいので、子ども達にとっても親しみやすくておすすめです。
この本もワークシート形式になっていて、日常生活によくある場面が使われていてとても参考になります。
子どもが困った場面を題材にしているので、子ども自身も取り組みやすいです。
この本では、会話のルールやマナーがイラストを使ってわかりやすくまとめられています。
「なんで電話の時にはもしもしって言うのかな?」
「なんで話す時には目を見て話さなければならないんだろう?」
こんな会話のちょっとした疑問にわかりやすく答えてくれるので、ASD傾向のこだわりがある子どもなどにおすすめです。
おわりに
今回はSSTについてお話ししていきました。
SSTについて相談の中で話をすると、よく
「コミュニケーションなんて自然と身に付くと思ってたから、わざわざ練習するのはどうなんだろうと感じました」
という言葉を聞くことがあります。
以前までの生活であれば、さまざまな経験の中から子ども達が学び取ることもできていたかもしれません。
しかし、近年の生活様式ではコミュニケーションを取れる機会が制限されてしまうなど、子ども達にとって学ぶ機会が少なくなっているのも事実です。
また、発達障害などのような特性のある子どもにとっては、意図的にコミュニケーションを学ぶということはとても大切なものになってきます。
少しでも子ども達の負担を減らすためにも、SSTを取り入れていただくのもいいのではないでしょうか。
今回も読んでいただきありがとうございました。








