中学校での相談の中で、発達に特性のある子どもを持つママから時折、
「子どもが将来自立した大人になるために、やっておいた方がいいことはあるのでしょうか。」
こうした質問をされることがあります。
中学生までは家庭や学校でのサポートがしやすいですが、いざ中学校を卒業すると子ども自身の判断で過ごさなければならない場面も増えていきます。
そこで今回は、子どもが自立した生活を送るために必要なライフスキルについてお話ししていきます。
Contents
そもそもライフスキルってなんだろう?
ライフスキルとは、その言葉の通り日常生活を送るために必要な力のことを言います。
WHOでは、
- 意思決定
- 問題解決
- 創造的思考
- 批判的思考
- 効果的コミュニケーション
- 対人関係
- 自己認識
- 共感性
- 情緒対処
- ストレス対処
この10個を具体的なライフスキルとして定義しています。
しかし、これらすべてを兼ね備えることは大人でもなかなか難しいです。

私が日々の相談の中でママ達にお話ししているライフスキルは、
- 生活習慣を整える
- TPOに合った身だしなみ
- お金の使い方
- 光熱費など生活に必要な知識を覚える
この4つを特に重視しています。
①生活習慣を整える
中学生でも、朝はママに起こしてもらっているという子も少なくありません。
しかし、将来自立して一人暮らしになった時には起こしてくれる人はいません。
「一人暮らししたら自分で起きられるようになる」
そんな風に話す子どもが多いですが、実際にはそううまくいくものではないと思います。
睡眠のことだけではなく、健康な食事や病気になった時の対処の仕方など知っているつもりでも実際にやろうと思うとなかなか難しいものです。
家族と暮らしていた時には、誰かが助けてくれたけど一人暮らしではそうもいきません。
体調不良になると看病してくれる人もいないので、まずは体調不良にならないように日々の生活に気を付ける必要があります。
そうしたママ達からすると「当たり前」だと感じるようなことを、子ども達には伝えることがとても大切です。
- 住んでいるところの近くにどんな病院があるか調べておく
- コンビニ等の外食でも、健康に必要な栄養を取れるように考える
- 夜更かしをし過ぎないなど、自分で生活スケジュールの管理をする など

②TPOに合った身だしなみ
発達に特性のある子どもの中には、身だしなみに無頓着な子どもが少なからずいます。
- シャツの裾がズボンからはみ出す
- 寝癖をそのままにする
- 朝起きてから顔や歯を洗わない
こうしただらしない状態だけではなく、
- 気温に関係なく、常に半袖(長袖)を着る
- 冠婚葬祭に普段着で行く
このような場面を無視してしまうケースもあります。
感覚過敏や感覚鈍麻によって、着られる服が限られて季節感にそぐわない服を着てしまうこともあるかもしれません。
「自分は別に気にならないから」
身だしなみが整わない子どもからは、こんな言葉が返ってくることもあります。
身だしなみは自分が気になるかどうかで考えるのではなく、季節や場面といったTPOによって変えていく必要があるものだということを教えることが大切です。
ゲーム好きな子どもには、ステージに合わせて装備を変えることを自分に置き換えて考えてみるように促すとしっくりくるケースもありました。

③お金の使い方
発達に特性のある子どもの中には、お小遣いを渡されたその日のうちに使い切ってしまうという子がいます。
あればある分だけ使い切ってしまうため、いざ自分がほしいものができた時にお小遣いを貯められずに買えなかったという話もよく聞きます。
家族と一緒に暮らしているうちはそれでもなんとかやっていけるかもしれません。
しかし、一人暮らしをして自分で働いてもらった給料を後先考えずに使い切ってしまっていたら生活は途端に立ち行かなくなってしまいます。
最近ではキャッシュレス決済も増えてきて、現金に触れる機会が減っていることもあり、お金の感覚が身に付きにくいことも影響していると思います。
そうならないためにも、子どものうちから
- 物の値段の相場
- 買い物の優先順位の付け方
- 光熱費や食費はどのぐらいかかるものなのか
- 銀行の口座管理の仕方
といった知識を少しずつ伝えていく必要があります。
特別に時間を作って教えるというわけではなく、一緒に買い物に行った時に教えるなど日常生活の中でその都度伝え続けることが大切です。

④生活に必要な知識を身に付ける
家族で暮らしていると、いつの間にかきれいに掃除されていたり汚れものが洗濯されていたりと自分で何かをしなくても快適に生活できてしまいます。
特に子どものうちは、ママが部屋を掃除してくれたり洗濯してくれたりと自分で何かをしようと考えなくても済んでしまうことも多いです。
いざ一人暮らしで部屋をきれいにしようとしても、あまり掃除をしてこなかった子ども達には無理難題のように思えるかもしれません。
地域によってはゴミの分別方法やゴミ出しの曜日も異なるため、ゴミを捨てたくてもよくわからなくてゴミ捨てを諦めてしまうケースも少なくありません。
ゴミがあふれた部屋で生活するのは健康的な生活とは言えません。
- 自分が住んでいる地域の分別方法やゴミの回収日を知る
- 衣類の洗濯方法を身に付ける
- 水回り等の掃除の仕方を身に付ける
こうした知識を身に付けておくと、いざ一人暮らしとなった時にも快適な生活環境を整えられるようになります。

こうしたライフスキルを獲得するために、ご家庭ではどのようなことができるのでしょうか。
家庭で実践!ライフスキルトレーニング
ここでは、
- 身だしなみの整え方
- お金の使い方
この2点についてお話ししていきます。
①身だしなみの整え方
気温の変化やTPOに合わせて洋服を選ぶことは、大人でも頭を悩ませてしまうことがあります。
特に暑さや寒さを感じにくい子どもの場合、気温の変化に合わせて洋服を選ぶことはとても難しいです。
そうした子どもには『日本気象協会』のHPに記載されている、『服装指数』を参考にすると、視覚的に情報を得やすいのでおすすめです。
それ以外にも、気温に合わせて自分が持っている服装でコーディネートを作り、それを写真で残して表などにまとめるとわかりやすくなります。

冠婚葬祭など、特別な行事の服装選びは子どもの時になかなか経験するものではないので、そうした場面が来た時に相談できるような体制を整えて置けると安心です。
②お金の使い方
買い物の回数が増えてくると、大人でも何にどのぐらいのお金を使ったのか把握することが難しくなることがあります。
衝動性が強い子どもだと、自分の欲しいという気持ちのままに買い物をしてしまい何にお金を使ったのか覚えていないことが多いです。
電子マネーなどスマホ決済だと買い物の履歴が残るため、何に使ったか振り返るのに役立つ一方で、気軽に使えることから高額課金につながる危険性もあります。
スマホアプリにはレシートの写真を撮ることで家計簿にまとめてくれるものもあるので、そうしたツールも活用してお金の流れを把握することもおすすめです。
衝動的に買い物をしてしまう子どもには、事前に買うものをメモをしてメモしたものだけを買うということをルール付けをすることも大切です。

こうしたライフスキルトレーニング以外にも、子ども達にとって身に付けておいた方がいいライフスキルもあります。
この本はライフスキルを10個のスキルに分類して、家庭で実践しやすい取り組みについて丁寧に解説しています。
家庭の中で子ども達が実践できるといいことについてまとめてあるため、ママ達が読むのにおすすめです。
この本はライフスキルを4個に分類して、 子ども自身が自分の行動を振り返るのに役立つ1冊です。
具体的な場面ごとにどのように行動するといいのかがわかりやすくまとめてあるため、子どもが自分で読んで実践するのにおすすめです。
おわりに
今回は子どもが自立した生活を送るために必要なライフスキルについてお話ししていきました。
ママ達から見ると当たり前のもののように感じるかもしれませんが、発達に特性のある子どもの中には、こうした当たり前はなかなか身に付かない子がとても多いです。
当たり前だと感じるからこそあえて教えていない
こんな風に考えることもできまずが、発達に特性のある子ども達は暗黙の了解やマナーといった目に見えないものを自分の力だけで理解することが難しいということを覚えておいてほしいです。
「これぐらいできるでしょ」
この言葉は子どもの自信を低下させる危険性もあるため、「これぐらい」と考えずに一つ一つ説明していくことが大切という考え方をしていただけるといいかもしれません。
今回も読んでいただきありがとうございました。








