スクールカウンセラーとして相談を受ける中で、時折
- 「近づいてきた友達を叩いてしまった」
- 「大人が目を離したすきに友達に噛みついてけがをさせてしまった」
のようなお話を聞く機会があります。
友達に手を出してしまうようなことがあるとママ達も心配になるのではないでしょうか。
そこで今回は、子どもの他害に対してできることについてお話ししていきます。
Contents
そもそも「他害」って何?
他害という言葉だけだと、どのようなものかイメージしにくいかもしれません。
他害と併せて自傷という言葉も使われることがあるので、この2つについて簡単に説明していきます。
自傷 |
のような自分の体を傷つけてしまう行為 |
---|---|
他害 |
のような相手を傷つけてしまう行為 |
傷つける対象が自分か他者かによって呼び方が変わってきます。
今回は他者を傷つけてしまう行為に焦点を当てていきます。

なんで他害をしてしまうの?
他害をしてしまう原因はさまざまなものがあります。
- 言葉での表現が苦手
- コミュニケーションをうまく取れない
- 衝動的な行動を取りやすい
こうした要因があると他害という手段を使って自分の気持ちを表現してしまう危険性が高くなります。
特に、知的障害や自閉傾向のあるような特性を持つ子どもの場合、上記の要因から他害をしてしまう事例がとても多いです。
しかし、他害をしてしまう子どもは「相手を傷つけてやろう」という気持ちで他害をするわけではありません。
自分の「困った」や「嫌だ」という気持ちを言葉でうまく表現できなくて、他害を使ってSOSを発信していると考えられます。
他害は子どもにとってのSOS!
SOSをうまく受け止められるように見方を変えてみよう!

では、子どもが他害をしてしまった場合、どのようにすればいいのでしょうか。
他害をしてしまったらどうすればいいの?
他害が起こってしまった時には、できるだけ素早くその場から離れて静かで落ち着ける場所に移動することを優先してください。
その際に、他害の相手の子どもに対しても安心できるような声かけを意識していただけるといいと思います。
それ以外のできることはというと、
- 何に困っているかを観察する
- 他害以外の気持ちの表現方法を伝える
- 周囲にも理解してもらえるよう伝える
- 環境を整える
のような方法が考えられます。

①何に困っているかを観察する
他害は子どもにとってのSOSのサインだと考えられます。
なので、子どもが何に困っているのかを観察することによって、他害のきっかけとなりそうなものを見つけられるといいと思います。
よくあるものは、
- 教室の中の音がザワザワして落ち着かない
- 急な予定変更でイライラしている
- 次にやることがわからなくて不安になっている
- 物がごちゃごちゃとしていて気持ちが落ち着かない
- 特定の友達に対して反応してしまう
のようなものが挙げられます。
こうしたきっかけが見つかるだけでも、対処の仕方が見つかりやすくなるので、まずはきっかけ探しを意識していただくといいのではないでしょうか。

②他害以外の気持ちの表現方法を伝える
言葉での感情表現が苦手なゆえに、他害をしてしまう子どもは少なくありません。
他害以外に相手に「嫌だ」を伝える方法を知らないことも、他害をしてしまう一因になります。
そこで、
のような絵カードを活用して相手に気持ちを伝える方法を練習してみるのもいいと思います。
それ以外にも、
- 友達に嫌なことをされたら、友達に手で×を作って伝える
- 大きな音が嫌だったら、両手で耳をふさぐ
- 人が近づきすぎて困ったら、人が少ないところに避難する
のような方法もいいかもしれません。
まずはお家で練習して、相手に伝えるイメージができるように工夫してみよう!

③周囲にも理解してもらえるように伝える
他害を減らすためには、周囲の理解と協力も必要不可欠です。
子どもがどんなことをされると嫌なのかを、友達にも知ってもらうことで他害のきっかけを減らすことができます。
たとえば、
- 1人で遊びたい時もあるから、一緒に遊ぶのを強制しない
- 距離が近いとイライラしやすくなるので、なるべく体に触ったり腕を引っ張ったりしない
- 手をつなぐ必要がある時は、子どもに手をつないでもいいか確認する
のような対応をお願いするだけでも、子どもにとって過ごしやすさが違います。

④環境を整える
こうした子ども自身や周囲への働きかけ以外にも、子どもが過ごす環境を整えることも他害を減らすためには必要です。
- 見やすい位置にスケジュール表を貼る
- 予定が変わったらすぐに教える
- トラブルになりやすい子と席を離す
- 気持ちを落ち着ける避難場所をつくる
こうした環境調整をすることが、子どもにとってはとても大切な作業になってきます。
学校ごとに対応可能な範囲が変わってくるので、どこまでが可能かどうかを学校に確認していただくのもいいのではないでしょうか。
先生に直接聞きにくい、そんな時にはスクールカウンセラーに相談してみるのもおすすめです。

おわりに
今回は、子どもが他害をしてしまった時の対処の仕方についてお話ししていきました。
子どもが他害をしてしまうと、ママ達にとっては非常に大きなストレスになってしまうと思います。
- また同じことがあったらどうしよう
- 相手の人になんて思われるか不安
- 友達がいなくなってしまうかもしれない
こうした思いが頭から離れなくなってしまうのではないでしょうか。
どうしても他害は相手がいることなので、不安や心配が大きくなりやすいです。
他害の対処は一朝一夕でどうにかなるものではないため、気長にコツコツと積み重ねる必要があります。
ママ自身が信頼できる相談相手を見つけて、不安や心配を抱え込み過ぎないようにすることも、他害の対処にはとても重要になってきます。
今回も読んでいただきありがとうございました。