近年、「自閉症(Autism)」と「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)」という言葉がよく使われます。
しかし、両者の違いについて正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。
普段の相談の中でも、
「自閉スペクトラム症と診断されたけど、自閉症と何が違うんですか?」
こんな風に聞かれることが時折あります。
そこで今回は、自閉症と自閉スペクトラム症それぞれの定義や診断基準、特徴、支援方法などを詳しく解説し、違いを明確にしていきます。
Contents
そもそも自閉症ってなんだろう?
自閉症は、発達障害の一種であり、主に対人関係の困難、言語やコミュニケーションの問題、興味や行動の偏りなどが特徴とされています。
20世紀初頭から研究されており、1943年にアメリカの精神科医レオ・カナーが「幼児自閉症(infantile autism)」として概念化しました。
- コミュニケーションの課題
- 言葉の課題
- こだわりの課題
コミュニケーションの課題
自閉症の子どもは、対人関係に困難を抱えることが多く、例えば目を合わせることを避ける傾向があります。
また、相手の感情や意図を理解するのが難しく、友達との自然な交流がうまくいかないことがよくあります。
「相手がどう思うかを考えなさい」
そんな風に言われても、自閉症の子どもからすると無理難題を押し付けられているような状態でしかありません。
いくつかのパターンに即して対応する力を伸ばしていくことはできますが、
「言わなくてもわかるでしょ」
という指示の出し方だと混乱してしまうので、具体的な対応の仕方を教えていくことが大切です。

言葉の課題
自閉症の子どもは、言葉の発達が遅れたり、独特の話し方をすることがあります。
例えば、オウム返しのように相手の言葉をそのまま繰り返したり、一方的に自分の興味のある話題を話し続けたりすることが特徴的です。
また、会話の文脈を読み取ることが難しく、相手の意図を正しく理解するのに苦労することがあります。
冗談を真に受け止めすぎてしまい、激しく落ち込んでしまったり怒ってしまったりしてしまうというケースもよく聞きます。
「あいつは空気が読めないから」
そんな風にまわりの子から言われてしまい、落ち込んでしまって学校に行けなくなってしまうことも時々あります。
相手に意図を聞き返したくても、みんなの会話のテンポについていけずにズレたタイミングで質問してしまうこともあり、そうした時の変な空気感を子どもたちも敏感に察知しています。
雑談は苦手でも、スピーチのような話す内容が決まっているものだと堂々と話すことができる子も少なくないので、そうした面からも周囲の理解の得られなさにつながるのかもしれません。

こだわりの課題
自閉症の子どもは、特定の物や活動に強いこだわりを持つことがあります。
例えば、特定の種類のおもちゃだけを集めたり、毎日決まった順番で物事を進めないと落ち着かないなどの行動が見られます。
また、日々のルーティンが崩れると強いストレスを感じ、不安やパニックになることもあります。
学校生活の中だと、運動会などの学校行事は時間割の変動が激しくなる時期でもあるので自閉症の子どもからするととても苦痛な季節だと思います。

自閉スペクトラム症(ASD)ってなんだろう?
自閉症スペクトラム症(ASD)は、自閉症を含むより広範な概念です。
- 自閉症
- アスペルガー症候群
- 広汎性発達障害
こんな風にそれぞれ診断名が分かれていました

- 自閉症
- アスペルガー症候群
- 広汎性発達障害
2013年のDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)により、上記の診断がすべて「自閉症スペクトラム症」と統合されました。

ASDの特徴は自閉症と類似していますが、症状の程度に幅がある点が大きな違いです。
《軽度の自閉スペクトラム症の場合》
- 日常生活の中では大きな支障はない
- 社会的な場面で違和感を覚えたり、コミュニケーションのぎこちなさが見られたりする
《重度の自閉スペクトラム症の場合》
- 言葉の発達が著しく遅れることがある
- 日常生活の中で常に介助が必要なケースもある
これ以外にも、知識の発達の仕方にも幅があります。
- 知的障害を伴う場合と、知的能力が高い場合がある
- 「サヴァン症候群」のように特定の分野で突出した才能を持つ人もいる
ASDの中には、言葉のやり取り自体はできるものの、場の空気を読むことが苦手な人もいます。
例えば、会話の流れを理解するのが難しく、一方的に自分の話を続けてしまったり、相手の感情の変化に気づかず無意識に不適切な発言をしてしまうことがあります。

自閉症と自閉スペクトラム症に違いってあるの?
自閉症と自閉スペクトラム症(ASD)は、密接に関連した概念ですが、いくつかの重要な違いがあります。
- 概念の違い
- 診断基準の違い
- 症状の程度の違い
①概念の違い
自閉症は、かつて独立した発達障害として診断されていましたが、現在ではASDの一部とされています。
ASDは、「スペクトラム(連続体)」という概念を含んでおり、症状の軽重や特性に幅があることを示しています。
つまり、自閉症はASDの中に含まれる一つの診断カテゴリーとして位置づけられるようになりました。
②診断基準の違い
DSM-4では、自閉性障害、アスペルガー症候群、PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)といった異なる診断名が用いられていました。
しかし、DSM-5(2013年)以降では、これらが統合されて「自閉症スペクトラム症(ASD)」として診断されるようになりました。
これにより、診断の幅が広がり、個々の特性に応じた柔軟な評価が可能となりました。
③症状の程度の違い
自閉症は、従来はより重度のケースを指すことが多く、言葉の発達が遅れる、強いこだわり行動がある、日常生活に大きな支援が必要といった特徴が顕著でした。
一方で、ASDは症状の範囲が広く、軽度のASDでは言語能力が正常で、日常生活に大きな支障がない場合もあります。
これにより、ASDは自閉症に比べて、個々の特性や能力に応じた診断や支援が行われるようになっています。

自閉症と自閉スペクトラム症では支援方法に違いはあるの?
自閉症およびASDの支援には、明確に違いがあるわけではありませんが、症状の程度に応じたアプローチが求められます。
- 言語・コミュニケーションの支援
- 社会的スキルのトレーニング
- 環境の調整
①言語・コミュニケーションの支援
言葉の発達が遅れている場合、言語療法を受けることが有効です。
専門の言語聴覚士と共に、発話を促すトレーニングや、適切な表現方法を学ぶことで子どもの言葉の力を高められます。
また、コミュニケーションが困難な子どもには、絵カード(PECS)を使用することで視覚的なサポートを提供したり、AAC(補助代替コミュニケーション)を活用して、会話を補助する方法が役立ちます。
こうした絵カードを使って、日々の生活の中でコミュニケーションのやり取りを工夫している子どももいます。
②社会的スキルのトレーニング
軽度のASDの子どもには、ソーシャルスキルトレーニング(SST)が有効です。
SSTでは、対人関係を築くための具体的な方法をロールプレイングを通じて学びます。
例えば、「順番を待つ」「適切な距離感を保つ」「相手の話を聞く」などのスキルを練習することで、より円滑なコミュニケーションができるようになります。
グループでの練習を行うことで、他の子どもと交流する機会を増やし、実践的な経験を積むことも重要です。
こうした実際に起こりそうな場面を設定して、「こんなときどうする?」を 考えてみるツールもあるので、ご家庭でも取り組んでみるのもおすすめです。
私も普段の相談の中で、こうしたカードなどを使って子どもたちと対応の仕方を考えることがよくあります。
③環境の調整
感覚過敏のある子どもには、環境を調整することが必要不可欠です。
例えば、
- 蛍光灯の光が刺激となる場合は、暖色系の照明を使用する
- 音に敏感な場合はノイズキャンセリングヘッドフォンを活用する
こんな風に快適な環境を整えることが有効です。
学校や職場では、静かなスペースを確保したり、柔軟なスケジュールを組むことでストレスを軽減することができます。
また、本人の特性を理解し、適切な配慮を提供することで、より安心して活動できる環境を作ることが重要です。

おわりに
診断基準の変更により、自閉症を含むすべての発達特性が「スペクトラム」として捉えられるようになりました。
以前の診断に慣れている人からすると、
「なんでわざわざひとまとめにするんだろう?」
と感じるかもしれません。
診断基準を変更することで柔軟な支援が可能となり、それぞれの特性に応じた適切なサポートを受けられるようになるなどのメリットがあることを知ってもらいたいです。
大切なことは、個々の違いを理解し、その特性に合わせた適切なサポートを行うことです。
家族や教育者、社会全体が自閉症やASDについて正しく理解し、共に成長できる環境を整えることが、より良い未来につながると思います。
今回も読んでいただきありがとうございました。
この記事には一部生成AIによる文章を使用しています。








