カウンセラーとして相談を受ける中で、
「知能検査ってどんなことをするんですか?」
という質問を受けることがあります。
ママ達からするとただ単に子どものIQが分かるものというイメージが強いかもしれません。
実際には、IQだけを見る検査ではなく、子どもの知能の発達のバランスがどうなっているかを総合的に見る検査になります。
今回は、そんな知能検査についてお話ししていきたいと思います。
Contents
そもそも知能検査って何?
一般的に、知能検査と呼ばれるものでメジャーな検査は
- 田中ビネー検査
- WISC-IV
の2種類だと思います。
特にWISC-IVの検査は教育現場でもよく活用されているので、聞いたことのあるママも多いかのではないでしょうか。
どちらの検査も、子どもの発達がどのくらいの水準にあるのか、発達のバランスはどのようになっているのかを総合的に見る検査となっています。
では実際に発達検査を行うのは、どういった場合なのでしょうか。
どんな時に発達検査をするの?
発達検査は子どもの状況によって実施するかどうかを決定します。
明確な実施対象の基準があるわけではないですが、私がこれまで相談を受けてきて検査をご案内したのは
- 学習でのつまずきが見られる
- 療育手帳の取得を考えている
- 発達障害かどうか気になる
のような場合には、検査を勧めてきました。
上記のパターンに当てはまったら必ずしも検査を受けなければならない、というわけではありません。
本当に検査が必要かどうかを子どもやママ、対応している先生等と確認しながら決めていきます。
この記事を読んで悩まれているママがいたら、地域のスクールカウンセラーに相談してみるのもいいかもしれません。
では、実際に発達検査とはどんなことをするのでしょうか。
上記で紹介した2つの発達検査について簡単にお話ししていきます。
田中ビネー検査ってどんな検査?
- 適用年齢:2歳から成人
- 実施時間:60~90分
- 実施頻度:1年間の期間を空けて実施することが望ましい
- 問題構成:思考・言語・記憶・数量・知覚などの分野から、子どもが本来の力を発揮しやすいよう、日常場面に即した問題で構成
この検査は、人が何かの問題に直面したとき、①方向性②目的性③自己批判性という共通する能力を「知能」と考えて構成されています。
①方向性:何らかの問題が生じたときに、問題に向かって、集中する力
②目的性:諦めて投げ出すことなく、最後まで問題に取り組み続ける力
③自己批判性:自分の反応について正しく自己批判するもので、客観的な評価能力
この検査では、年齢を
- 生活年齢:検査を受けた子どもの実年齢
- 精神年齢:検査を受けた子どもが、どの年齢の成績の平均点の成績を取れたか、ということを示したもの
という考えで定義しています。
問題も、2歳級、3歳級、4歳級・・・と各年齢段階に応じて作られているので、どの年齢級の検査まで正解できたか確認することによって、同年代の子どもと発達にどの程度差があるのかを見ることができます。
WISC-IVってどんな検査?
- 適用年齢:5歳0か月~16歳11か月
- 実施時間:60~90分
- 実施頻度:1年間の期間を空けて実施することが望ましい
- 問題構成:10種類の基本下位検査と、5種類の補助下位検査(必要があれば行う検査)の合計15の検査で構成
この検査は、子どもの全体的な知的能力とさまざまな能力の発達の過程の2つがわかります。
そのため、この検査を受けることによって子どもの得意分野と苦手分野を見極め、それぞれの子どもの特徴に合わせた支援の工夫を見つけやすくなります。
①全検査IQ:全体的な知的能力
②言語理解:言葉の理解力や表現力
③知覚推理:目で見たことを理解し、考える力
④ワーキングメモリー:耳で聞いた情報に集中し、情報について考える力
⑤処理速度:手順が決まった作業を速く正確にこなす力
上記のような力の結果によって、子どもの得意分野と苦手分野のバランスを見ていくことになります。
検査の内容も、言葉で答えてもらうものと積み木などを操作して答えてもらうものがあり、さまざまな力を見ることができます。
では具体的にどのように支援方法を考えていくのかというと、
【知覚推理が得意でワーキングメモリーが苦手】
→一斉の指示では伝わりにくいかもしれないので、黒板にも指示の内容を書く
【ワーキングメモリーが得意で知覚推理が苦手】
→みんなの動きに合わせるのが苦手かもしれないので、個別に声掛けをする
【処理速度が遅い】
→板書を写すのに時間がかかり先生の話が聞けないかもしれないので、板書を後でカメラで撮影してノートに貼る
のような支援につなげていきます。
しかし、上記の対応がすべてではなく子どもの状況や学校の支援体制によっても支援方法は変わっていきます。
知能検査はどこで受けられるの?
実際に知能検査を受けてみたいと考えた時に、どこで受けられるのかというと
- 病院
- 児童相談所
- 教育相談センター
- 心理系大学院等に併設されているカウンセリングルーム
が主に受けられるところだと思います。
最後に書いてある大学院等に併設されているカウンセリングルームとは、これからカウンセラーになろうと学んでいる大学院生が教育活動の一環として開いている場所になります。
他の場所と異なり資格があるカウンセラーではなく、カウンセラーの卵の学習のための機関なので、その点をご理解した上で選んでいただくのがいいと思います。
では、実際に検査を受けるとなった場合、子どもにどのように話をしたらいいのでしょうか。
検査を受ける時に子どもになんて説明したらいいの?
「検査」と聞くと子どもの中には、病院で行われる痛くて怖い検査を想像してしまう子もいます。
そうすると、来るのを嫌がったり緊張でいつもの力を発揮できなかったりしてしまう危険性があります。
なので、子どもに検査について説明する時は「クイズやなぞなぞみたいなことをする」というように、子どもの理解力に合わせて伝えていただくのがいいと思います。
なんとなくでもいいので、子どもなりに検査のイメージを持っておくと検査を受けやすくなります。

おわりに
今回は知能検査についてお話ししていきました。
こうした検査を受けたからといって子どものことがすべてわかるわけではありません。
それでも子ども達の持っている力について少しでも理解できるように、今回お話しした知能検査が使われています。
検査の結果に一喜一憂するのではなく、子どもの実態を把握してどのように支援していけばいいのかを考えるための検査だとわかってもらえたら嬉しいです。
私自身、以前は教育相談員としてWISC-IVを実施してきました。
検査の結果だけでなく、その時の子どもの様子やご家庭、学校での様子などさまざまな子どもの様子を踏まえた上でどんな支援方法が子どもに合っているのかな、と試行錯誤する日々を過ごしてきました。
こうした経験が今スクールカウンセラーとして勤務する中でも生かされています。
子どもそれぞれに何が合うのかを見つけるのはとても難しいかもしれません。
それでも、何ができるかなを常に考えながらこれからもママ達と一緒に探していきたいと考えています。
今回も読んでいただきありがとうございました。
また次回も読んでもらえると嬉しいです。