5月のGW明けに、新型コロナウイルスの感染症法の位置づけが5類に変わるとニュースで報じられました。
そうした中で、相談の声として上がってくるのが
- 「コロナが終わってもマスクを外したくない」
- 「人前でマスクを外せないから、ご飯をみんなと一緒に食べられない」
- 「マスクを外してがっかりされたらと思うと不安になる」
こうした子ども達の声です。
ある日突然マスク必須の生活になり、そこから約3年間マスクを人前で外すことはあまりありませんでした。
そうした中で、このような気持ちになるのはとても自然な感情だと言えます。
しかし、中にはこうした気持ちが強すぎるあまりに日常生活に支障が出てしまう子も少なからずいます。
そこで今回は、マスクが手放せない子の中にもいるかもしれない醜形恐怖症についてお話ししていきます。

Contents
醜形恐怖症ってどんな病気?
醜形恐怖症とは、過剰に見た目を気にしてしまい、鏡を見たり髪を整えたりなどの行動を異常なまでに反復してしまう病気です。
身だしなみを整える際に、
「周りから自分はどんな風に見られているか」
という視点を持つことはとても自然なことです。
しかし、醜形恐怖症になってしまうと周りからどう見られているかを気にするあまり、気にしなくていいところまで過剰に気にするようになります。
そうすると身だしなみを整える時間が伸びていき、次第に外出が難しくなるなどの日常生活に支障をきたしてしまうのも醜形恐怖症の特徴です。

身だしなみを整えることは生活していく上でとても自然なことなので、過剰な状態になっていてもなかなか気づかれにくいものです。
また、たとえ気付いたとしても
「そんなに気にすることないよ」
「いくらやっても変わらないんだからいい加減にしなさい」
とだけ言って、何もせずに見ているだけということもあるかもしれません。
こうした気づかれにくさも醜形恐怖症にはあります。

では、具体的にはどのような症状があるのでしょうか。
醜形恐怖症の症状はどんなものがあるの?
醜形恐怖症の症状で見られるのものは、
- 準備に時間がかかりすぎる
- マスクやサングラスなどが手放せない
- 人前でご飯が食べられない
- 自分の臭いが気になる
こういったものが挙げられます。
準備に時間がかかりすぎる
外出する際に、身だしなみを整えようと考えるのは自然なことです。
しかし、醜形恐怖症の人は身だしなみを整えるための手順が決まっていて、思うようにできないと時間など関係なく気が済むまでやってしまいます。
完璧主義的な考えを持つ人がなりやすく、自分に自信を持つためにやっていたことが、自分を苦しめてしまうことになってしまいがちです。
いくらやっても終わりが見えない準備の時間に疲れ果てて、外出をするのが嫌になってしまう危険性もあります。

マスクやサングラスが手放せない
最近では、目を大きく見せるためにカラーコンタクトを着用する女の子が増えました。
そうした子達からすると、カラーコンタクトを付けずに外に出るのは裸で外出するのと同じような感覚になってしまうようです。
付けるのが自然になっているものを、急に外すことになって不安に感じるのは当たり前の感覚です。
コロナ禍でマスクを着用することが当たり前となった世の中で、マスクを外すということは裸になるのと同じような感覚になってしまうのかもしれません。
マスクで顔を覆うのに慣れてしまったことで、マスクをつけた状態が自分の顔だと考えてしまうこともあります。
また、マスクがない状態で人前に出た時に、みんなの反応がどうなるのかが不安になって手放せないということも考えられます。

人前でご飯が食べられない
これは会食恐怖とも言われ、口元を見られることを不安に感じて人前でご飯が食べられなくなってしまいます。
周囲からの視線が気になり、みんなの反応を確認しながら食事をしなくてはならないので、食事の時間がとても疲れるものになります。
家族との食事では、こうした症状が出ることはないのですが、外食や給食などの時に症状が出やすいです。
中には、「口元が見られなければ」という理由でマスクをつけた状態でなら、人前で食事ができる子もいます。

自分の臭いが気になる
これは自己臭恐怖とも言われ、周囲の人から自分が臭いと思われているのではないかという考えで頭がいっぱいになってしまいます。
友達からの何気ない指摘から、こうした考えが出てしまうこともあります。
自分の臭いは自分では正しく確認できないため、不安から制汗剤スプレーや消臭剤、口臭タブレットなどを大量に使用する状態も見られます。

では、こうした症状が見られたらすぐに治療をしなければならないのでしょうか。
治療につなげるタイミングは?
上記のような症状が見られたら、すぐに治療を始めた方がいいのか気になるママもいるのではないでしょうか。
基本的には、上記のような気持ちは程度の差はありますが、誰しもが持っているものです。
治療につなげた方がいいタイミングとしては、
- 社会生活に支障が出ている
- 憂うつな気持ちがずっと続いている
この2点を意識していただくといいと思います。
外出や人に会うのを億劫に感じて学校を休みがちになってしまったり、「こんな自分なんて」という気持ちが強くなって眠れなくなってしまったりすることがあれば治療を考えた方がいいかもしれません。

では、醜形恐怖症の治療にはどのようなものがあるのでしょうか。
醜形恐怖症の治療方法はどんなものがあるの?
子どもが醜形恐怖症かもしれないと感じた時に、受診先として考えられる場所は
- 児童精神科のある病院
- 心療内科のあるクリニック
などがあります。
中高生の年頃になると、大人と同じ病院でも受診できるようになるので選択肢も広がります。
医療機関の受診の際には、
- 日常のどんな場面でどのような気持ちが起きるか
- 生活にどの程度支障が出ているか
- 特徴的な行動をどの程度行なっているか
といったことを簡単にまとめておくと、医師に伝えやすくなるのでおすすめです。
そして、病院を受診して行われる治療方法は、
- 薬物療法
- 認知行動療法
この2つが代表的なものになります。

①薬物療法
醜形恐怖症になると、症状の状態にもよりますがうつ病を併発することがあります。
そのため、SSRIと呼ばれるうつ病や不安症に使われる薬が醜形恐怖症の治療にも有効だと考えられています。
副作用として吐き気や倦怠感がありますが、数日すると落ち着くことがほとんどです。
薬を飲むことで不安は落ち着きますが、それだけで行動のすべてを変えられるわけではありません。
なので、次にお話しする認知行動療法も併せて行なっていくことが、醜形恐怖症の治療では大切です。

②認知行動療法
認知行動療法とは、ストレスなどで狭くなってしまった考えや行動を、自由に考えたり行動したりできるように整えていく心理療法です。
醜形恐怖症では、自分の見た目に対して極端な考え方になってしまったり、過剰な行動をしてしまったりすることがあるので、そうした面を認知行動療法によって解消していくようにしていきます。
認知行動療法は心理士と一緒に行っていきますが、ホームワークといった形で自分一人でも実践できる取り組みを作るので、家庭でも実践していただくことになります。
わざわざ病院を受診してまでやるのはと感じるママも中にはいるかもしれません。
そうした時には、
このような本を読んで子どもと一緒に考えていくのも効果的です。
醜形恐怖症だけではなく不安全般に対しては 、
この本がわかりやすくておすすめです。
醜形恐怖症の治療には、薬物療法と認知行動療法の合わせ技が効果的!
おわりに
今回は、マスクが外せない子の中に隠れているかもしれない醜形恐怖症についてお話ししていきました。
子どもが感じている子ども自身の状態と、周囲から見た子どもの状態があまりにも違うことがあります。
そうした違いから、子どもの訴えを「思い込み」や「妄想」といった捉えをされてしまうケースも少なからずありました。
マスクが外せないからといって必ずしも醜形恐怖症だというわけではありません。
しかし、こうした病気があることを知ってもらえると「もしかしたら」の可能性を広げられるのではないでしょうか。
今回も読んでいただきありがとうございました。








