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子育て

高校の授業で精神疾患について学習がスタート!でも、精神疾患ってそもそも何?

2022年度から高校の学習指導要領が改定され、保健体育の授業で精神疾患についての学習が取り入れられることになりました。

コロナ禍の中、過度な不安やストレスに晒されてきた子ども達が精神疾患にかかる危険性が高まったことも、学習指導要領に精神疾患の項目が取り入れられた一因だと思います。

また、職場の中でもストレスチェックが取り入れられるなど、心の健康の重要性について広く知られてきているのも後押しになっているのではないでしょうか。

そこで、今回は精神疾患について高校の授業ではどのように触れていくのか、そもそも精神疾患とはどのようなものなのかについてお話ししていきます。

精神疾患について高校ではどんな風に学習するの?

保健体育の指導要領の中では、「精神疾患の予防と回復」という単元名で扱われます。

ただ精神疾患の具体例を説明するわけではなく、精神疾患にならないようにするための予防的な取り組みや精神疾患にかかった場合の回復までの手立てについても取り上げているのが特徴です。

また、具体的に

  1. うつ病
  2. 統合失調症
  3. 不安症
  4. 摂食障害

という4つの病名を取り上げて、病気の特徴や対処の仕方についても指導していくように規定されています。

 

では、上記4つの精神疾患についてそれぞれどんなものかお話ししていきます。

うつ病ってどんな病気?

  • うつ病とは何か
  • 発症年齢
  • どんな人がかかりやすいか
  • 症状
  • 経過
  • 治療法

うつ病とは何か

うつ病とは、いわゆる気分が落ち込むうつ状態だけではなく、気分が高揚する躁状態と呼ばれるものも含まれます。

診断では、うつ状態と躁状態を両方持っている人は双極性障害、うつ状態のみの人は単極性障害(いわゆるうつ病)となります。

発症年齢

思春期から年齢を重ねるごとに発症率が増加します。

特に、女性の方が男性よりも約2倍うつ病にかかりやすいと言われているので、その点では注意が必要です。

どんな人がかかりやすいか

うつ病にかかりやすい性格
  • 真面目
  • 几帳面
  • 仕事熱心
  • 完璧主義
  • 責任感が強い

このような性格の人がうつ病にかかりやすいと言われています。

原因

双極性障害
  • 遺伝的要因が大きい
うつ病
  • 過剰なストレス
  • 喪失体験
  • 生活の大きな変化(昇進・引っ越し・結婚など)

うつ病の原因の中で、昇進や引っ越し、結婚などの喜ばしい出来事が入っているのを疑問に思われる方もいるかもしれません。

上記でもお話ししたように、うつ病は真面目で責任感が強いがかかりやすいものです。

そうした人が自分に与えられた役割を過剰に重く受け止め、その責任の重さに耐えられなくなった時にうつ病になってしまうと考えられます。

子どもの場合だと、自分の実力より少し高めの志望校に合格した、部活などのリーダーを任されたというような時の様子を注意深く見てあげるのがいいかもしれません。

症状

躁症状
  • 普段よりも怒りっぽくなる
  • 注意力が散漫になり、さまざまなことに気持ちがそれやすくなる
  • 衝動買いや人に気前よくおごるなど、お金の使い方が荒くなる
  • 睡眠時間が短くなっているにもかかわらず、疲れを感じにくくなる
  • 本人に病気の認識はないため、活動がより活発になることもある

 

うつ症状
  • 物事を悲観的に考える
  • 自分の能力を過小評価する
  • あらゆる出来事の興味・関心がなくなる
  • 不安感・焦燥感が見られる場合もあり、その際には自殺の危険性が高い
  • 朝は調子が悪いが、夕方から調子が良くなるという人もいる

最近では、

「自分はうつ病かもしれない」

と精神科を受診する人も増えてきています。

その中には、勉強や仕事のやる気はでないけど趣味などは楽しめる、という人も時折います。

うつ病の場合、趣味すらも楽しめなくなるのが症状の特徴でもあるので、やる気はないけど趣味は楽しめるという場合はうつ病ではなく別の診断名がつくことになります。

経過

うつ状態一般的には数ヶ月~1年、時には数年間続くこともある
躁状態1~2ヶ月から数ヶ月

双極性障害の場合、うつ状態と躁状態を繰り返します。

うつ状態では自殺の危険性が高いので、周囲の人は気をつけて見ていく必要があります。

特に、うつ状態から回復しつつあるタイミングの方が自殺の危険性が高いと言われているので、良くなっているなと安心しすぎないように注意することも必要です。

治療

躁状態、うつ状態どちらも薬での治療をしていきます。

うつ状態の場合、薬での治療と一緒に十分な休養をさせることが非常に大切です。

大人が会社を休職することがあるように、子どもでも学校をきちんと休むことが治療の一環となっています。

こうした薬での治療と休養以外にも、カウンセリングなどの心理療法も効果的な方法です。

統合失調症ってどんな病気?

  • 統合失調症とは何か
  • 発症年齢
  • どんな人がかかりやすいか
  • 症状
  • 経過
  • 治療法

統合失調症とは何か

統合失調症とは、脳のさまざまな働きをまとめる力が弱くなり、気分や人間関係などに影響が出てくる病気です。

特徴的な症状として幻覚や妄想などがあげられますが、感情表現や意欲の低下などのようなうつ状態も引き起こします。

100人に1人の割合で発症する病気なので、みなさんがイメージする以上に発症している人が多い病気でもあります。

発症年齢

おおむね20歳前後の若い人が発症しやすく、発症の可能性があるのは16~40歳までです。

まれに10歳前後の子どもや、60歳前後の方も発症します。

どんな人がかかりやすいか

うつ病の時のように性格的にかかりやすい人というものがあるわけではありません。

一般的には、統合失調症は遺伝的要因と環境的要因の2つが絡んで発症すると言われています。

家族の中で精神疾患を持っている人がいれば、発症するリスクが高いと言えますが、それだけで発症するとも限りません。

過剰なストレスなどの環境的要因も合わさることにより、統合失調症を発症するのではないかと言われていますが、詳しい原因はまだ解明されていません。

症状

陽性症状・幻覚

・妄想

・話が支離滅裂でまとまりが悪くなる

陰性症状・感情の起伏が少なくなる

・考える力が乏しくなる

・社会とのつながりを拒否する

抑うつ・不安・意欲が低下する

・さまざまなことに不安を感じる

認知機能障害・注意力が散漫になる

・物事を順番に沿って進めるのが難しくなる

・過去の出来事などの記憶が曖昧になる

上記のような症状が統合失調症の特徴的な症状です。

陽性症状は発症直後によく見られるもので、治療が進むうちに陰性症状へと移行していくのが一般的です。

経過

発症から病気の発見までのタイミングや、症状の現れ方などによって経過はさまざまです。

一般的には、慢性化しやすい傾向にあり、根気強い治療が必要です。

治療法

妄想や幻覚などの陽性症状には薬での治療が用いられます。

陰性症状の段階に入ると、社会復帰に向けたリハビリも非常に効果的です。

陽性症状・陰性症状のどちらに対しても心理療法を行うことがあり、本人だけではなく家族に対してもかかわり方のフォローをするなどして支援を行っていきます。

不安症ってどんな病気?

  • 不安症とは何か
  • 発症年齢
  • どんな人がかかりやすいか
  • 症状
  • 治療法

不安症とは何か

さまざまな不安によって心身の不調が出ることを不安症と呼びます。

不安症の中には、パニック障害や強迫性障害、PTSDなども含まれています。

不安という感情は生活していく上で切っても切り離せないものなので、上手に付き合っていくことが求められます。

発症年齢

対人恐怖思春期から青年期にかけて発症しやすく、30歳を過ぎると症状が軽くなる
強迫性障害20歳くらいの青年期に発症しやすい

これ以外のものは特定の年齢で発症しやすいというものはありません。

どんな人がかかりやすいか

日本は他人に迷惑をかけないように気を付け、他人からどのように見られているかを気にする文化があります。

そうした文化の中で生活しているうちに、過度に他人を気にしすぎてしまうことによって不安症にかかることがあります。

また、強迫性障害は完璧主義で融通のきかない性格の人がかかりやすいとも言われています。

症状

パニック障害はっきりとした理由もないのに、このまま死んでしまうのではないかという強い不安が沸き起こる

動悸・息苦しさ・過呼吸・めまい・手足の震えなどの症状も出る

強迫性障害ある特定の考えが沸き起こって、それを打ち消すためにさまざまな行為をしてしまう

具体的には、

  • 家の鍵を閉めたか気になってしまい、駅まで行ったにもかかわらず家に戻ってしまう
  • 何かに触れると手が汚染されたと感じてしまい、すぐに手を洗わずにはいられない

といったことがあります

社会恐怖

(対人恐怖)

人前で食事をしたり、スピーチしたりすることができない

外出先のトイレでは緊張してしまい、トイレにはいることができない

大勢の人がいると緊張して何もできなくなってしまう 

心気症自分の健康状態について常に心配して、長い間不安に悩まされる

病院で異常がないと言われても信じられず、病院を転々と受診することもある

PTSD自分や他人が命の危機にさらされるような体験をした後、その体験を思い出して不安に駆られる

動悸やめまい、過呼吸のようなパニック発作を起こすこともある

ここ数年、コロナの影響もあって小学生の子どもでも手洗いの強迫性障害を発症する事例が増えてきています。

治療法

治療には薬を使った治療と心理療法を併用して行うことが効果的です。

また、不安やストレスを感じる環境を整えていく環境調整も重要になってきます。

不安症は周囲から見るとただの気にしすぎのように見えてしまうので、周囲の人の理解も必要です。

摂食障害ってどんな病気?

  • 摂食障害とは何か
  • 発症年齢
  • どんな人がかかりやすいか
  • 症状
  • 治療法

摂食障害とは何か

摂食障害とは、食事の量や食べ方など、食事に関連した行動の異常が続き、体重や体型のとらえ方など、心と体の両方に影響が及ぶ病気のことを言います。

コロナ禍でコロナ太りを気にして、摂食障害に至る子どもの数が増えてきているので注意が必要な病気でもあります。

発症年齢

思春期から25歳以下で発症し、男性よりも女性の方が発症する確立が高いです。

16~23歳の8人に1人が摂食障害にかかっているとも言われるぐらい身近な病気でもあります。

最近では、小学校高学年の子どもでも発症するケースもあるため、発症年齢が下がってくる傾向にあるかもしれません。

どんな人がかかりやすいか

性格的に真面目、完璧主義、責任感の強い人が発症しやすい傾向にあります。

ダイエットの目的で食事制限を始めて、目標値に到達するまでストイックにやり続けられるようなタイプの人はダイエットが行き過ぎてしまう危険性があります。

症状

神経性無食欲症
  • 極端な食事制限
  • 極端な体重減少(標準体重の15%以上の減少)
  • 自分の体形を正しく見ることができない(ボディイメージの障害)
  • 極端にやせていても、活発的に行動して学業の成績も良好
神経性大食症
  • 短い時間に大量の食べ物を摂取する
  • 食べあ後に手をのどに突っ込んで嘔吐する
  • 下剤の乱用も見られることもある

過食嘔吐があるタイプと過度な食事制限をするタイプとで診断名が異なります。

どちらかの症状が出ることがほとんどですが、時折過度な食事制限から過食嘔吐に移行したりその逆パターンもあったりします。

体重の減少が続くと栄養不足のため成長が止まったり、女性の場合は生理が止まったりしてしまうこともあるので注意が必要です。

治療法

体重の減少があまりにもひどい場合は入院による治療を行うことがあります。

思春期に発症することも多いため、体の形成に必要な栄養を取れずに成長が止まってしまう危険もあるため、早めに治療につなげることがその後の成長のためにも必要不可欠です。

また、栄養失調で死に至る危険もあるので、そういった意味でも早めの治療が大事になってきます。

家庭内で治療したい気持ちもあるかもしれませんが、急激に栄養を摂取すると体が驚いて逆効果になることもあるので、医師と相談しながら治療を進めていくことがいいと思います。

こうした入院による栄養補給の治療以外には、薬での治療と心理療法を行います。

おわりに

今回は、精神疾患についてお話ししていきました。

精神疾患は大人ではなく、子どものうちから発症するものも意外と多いです。

しかし、そのことはあまり知られているとは言えないので、病院の受診につながるまでに時間がかかりすぎてしまうのが心配しているところでもあります。

また、児童精神科など子どもの精神疾患を診られる医療機関が限られていて、予約に至るまでの期間が長いのも受診へのハードルになっているのではないでしょうか。

まずは、気になる症状があればかかりつけの小児科に相談するだけでも違うと思うので、心配だなと思うことがありましたら早いうちに相談にいってもらえると安心です。

わざわざ病院に行くのもな、という気持ちがあるようでしたらスクールカウンセラーに相談してみるのも一つの手だと思いますのでそちらも検討してみてください。

最近では、高校にもスクールカウンセラーが配置されているところが増えてきているので、高校でもスクールカウンセラーに相談できるかもしれません。

今回も読んでいただきありがとうございました。

また次回も読んでもらえると嬉しいです。