普段、スクールカウンセラーとして勤務している中で、
- 自分の感情を上手に表現することが苦手
- ママから離れるのが不安で常に一緒にいたい
- 人と接するのに緊張しすぎてしまう
- 不登校でほとんど外出できず、人とのかかわりがない
のような相談を受けた際に、専門機関でのプレイセラピーをおすすめすることがあります。
そこで、今回はプレイセラピーについてどのようなことが行われているかについてお話ししていきます。
プレイセラピーって何?
大人になると自分の気持ちを言葉で表現することができるようになってきますが、子どものうちは自分の気持ちをうまく言葉で表現することがまだ難しいです。
そのため、「遊び」を通じて子どもの自己表現の場を作る、プレイセラピーが子どものカウンセリング場面では使われることがあります。
特に、言葉での表現力がまだ弱い幼児~小学校低学年の子どもに対して効果的で、遊びを通してさまざまな表現をしてくれます。
小学校中学年~中学生にかけても、遊びと並行しながらお話しをすることもあるので、子どもの状態に応じて取り入れ方が変わってきます。
プレイセラピー内での遊びはさまざまで、
- ジェンガやボードゲームなどのおもちゃを使った遊び
- ボール投げや卓球などの体を動かす遊び
- 人形などを使ったごっこ遊び
- 色えんぴつやクレヨンを使った絵を描く遊び
などのようなものがあります。
この他にも、遊びの中で箱庭を作ってもらったり、描画で心理面を確認したりすることもあります。
こうした遊びを通して、子ども達それぞれの課題に応じたゴールに向けてプレイセラピーは行われていきます。
また、普段の遊びとは異なりルールなどの枠作りをきちんとした上で行われるので、何かしらの目的を持って遊びを進めていくことになります。
では、プレイセラピーはどこで受けられるのでしょうか。
プレイセラピーが受けられる場所は?
プレイセラピーが受けられる場所は、地域によっても異なりますが
- 病院やクリニック
- 地域の教育相談センター
- 民間のカウンセリング施設
- 大学院の心理相談室
などが考えられます。
病院やクリニック
児童精神科などが設置されている病院やクリニックの中には、プレイセラピーを実施している機関もあります。
病院では保険適用の有無によってプレイセラピーの値段も変わってくるので、その点はご自身でしっかりと確認していただくと安心です。
地域の教育相談センター
自治体によっては、教育相談センターを設置しているところもあるかと思います。
設置状況によってはプレイセラピーを行っていないところもあるかもしれませんが、自治体が設置している機関なので無料でプレイセラピーを受けることができます。
しかし、希望通りにプレイセラピーを受けられるかどうかは、教育相談センターごとの基準があるので、気になる方は問い合わせをしてみてください。
民間のカウンセリング施設
お住まいの地域によっては民間のカウンセリング施設がお近くにある方もいるのではないでしょうか。
民間のカウンセリング施設だと、保険適用外の扱いになるためカウンセリング費用が高額になることもあります。
施設ごとに特色がさまざまで得意としている領域も違うので、今の子どもの状況に応じた施設を選べるのは民間のカウンセリング施設のメリットだと思います。
大学院の心理相談室
臨床心理士や公認心理師の育成を行っている大学院には、学生の実習目的のために心理相談室が併設されています。
プレイセラピーを行うのは大学院生ではありますが、プレイセラピーの前後には指導教官の指導を受けることになっているので、基本に忠実なプレイセラピーを受けられると思います。
実習機関ということもあり、カウンセリング費用も比較的安価で金銭的な負担は少なめです。
お住まいの地域に大学院の心理相談室がある場合には、選択肢の一つとして考えてみるのもいいのではないでしょうか。
上記のような機関の中から、子どもやご家庭の状況に応じてプレイセラピーを受ける機関を選んでいただくのがいいのではないでしょうか。
では、次に私自身が関わったプレイセラピーの例についてお話ししていきます。
プレイセラピーの事例について
私はスクールカウンセラーとして勤務する前は、地域の教育相談センターで教育相談員をしていました。
そこでは、言葉によるカウンセリングだけではなく、子どもにもプレイセラピーを実施している機関でもあったので、その時の事例を簡単にお話しします。
落ち着きがなくて教室にいられず、入学直後から不登校になってしまった小学校低学年の男の子がいました。
その子は人とのかかわりも苦手で、攻撃的な面も見られ集団での生活に苦しさを感じている様子も見られました。
プレイセラピーでは、箱庭を中心に遊びを展開していき、時にはママを巻き込んで一緒にボードゲームをすることもありました。
最初のうちは、自分勝手にルールを作ってしまったり、箱庭も広がり過ぎてまとまりが見られなかったりしました。
しかし、プレイセラピーを続けていくうちに遊びのルールを守るようになり、箱庭の世界も少しずつまとまりを見せるようになってきました。
また、プレイセラピーを重ねていく中で、学校についても触れていき、集団ではない場所ならという本人とママの希望と信頼できる先生との出会いもあり、特別支援学級への転籍を経て学校に戻ることができました。
上記の例の男の子はとてもお話し上手な子でもありましたが、出てくる言葉と実際の行動にギャップがあり、そのギャップに苦しんでいるのだろうなということがうかがえました。
プレイセラピーの中で、さまざまな表現をしていくうちに少しずつ本来の力を発揮できるようになってきた姿がとても印象的な子でした。
スクールカウンセラーになってからも、相談に来てくれた子どもの中でもプレイセラピーの効果が得られると思った時には、地域の教育相談センターにつなぐこともあります。
そうしてプレイセラピーにつながった子も、最初はぎこちなかった遊びが徐々にカウンセラーとの関係ができてくる中で遊びの広がりを見せ、少しずつ自分の気持ちを表現できるようになる姿を何度も見てきました。
すべての子どもに効果がある、というわけではありませんが、子どもの表現を生かす場として活用できるのではないでしょうか。

おわりに
今回は、プレイセラピーについてお話ししていきました。
周りから見るとただ遊んでいるだけにしか見えない活動ですが、心理療法として確立されたきちんとしたセラピーです。
カウンセラーがルールなどの枠を作り、子どもの安心と安全を確保した状態で行われる遊びを通して、子ども達はさまざまな変化を見せてくれます。
時には、攻撃的な態度が強く出てしまうこともあるかもしれませんが、それも治療過程の中では必要な時期でもあるのでカウンセラーと連携を図りながら見守っていただきたいです。
もし、自分の子どもにプレイセラピーが向いているのかどうかや、実際に受けられる場所が近くにあるのかどうかなど気になることがありましたら、学校に来ているスクールカウンセラーに相談していただくのがいいと思います。
今回も読んでいただきありがとうございました。
また次回も読んでもらえると嬉しいです。