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子どもが起立性調節障害だとわかった時、親はどんな風に対処すればいいの?

2月に入り、厳しい寒さが続いていて布団からなかなか抜け出せなくなってしまう人も多いのではないでしょうか。

そうした中、子ども達が「朝起きられない」「立ちくらみがひどい」「学校に行きたくても体がつらくて行けない」——そんな症状が続いて病院で診察を受けたら、「起立性調節障害(OD)」と診断されたという相談が時折あります。

親としては、「まさかうちの子が?」と驚いたり、「怠けているわけではなかったんだ」とほっとしたり、いろんな気持ちが入り混じると思います。

でも、何より大切なのは、子どもの体調を理解し、どう対応していくかを知るこです。

そこで今回は、起立性調節障害の症状や原因、家庭でのサポート方法、学校との関係の築き方などについて詳しくお話ししていきます。

1. 起立性調節障害とは?

起立性調節障害(Orthostatic Dysregulation: OD)は、特に中学生頃の子どもに多く見られ、自律神経のバランスが崩れることで血圧や心拍数の調節がうまくいかなくなる病気です。

起立性調節障害の主な症状
  • 朝起きられない(午前中に症状が強く出ることが多い)
  • 立ちくらみやめまい(急に立ち上がるとふらつく)
  • 倦怠感(だるさ)(特に午前中に強い)
  • 頭痛や動悸
  • 食欲不振や吐き気
  • 集中力の低下、勉強に対する意欲が落ちる
  • 手足の冷えやしびれ
  • 情緒不安定になることがある

「朝、体が動かなくて学校に行けない」というケースがよくあり、「怠けているのでは?」と誤解されることも多いです。

しかし、これは意志の問題ではなく、体の調節機能がうまく働いていないために起こる症状だと周囲が理解することが大切です。

2. 起立性調節障害はなぜ起こるの?

起立性調節障害は成長期に多く見られる病気で、原因は主に以下のようなものが考えられます。

起立性調節障害の要因
  • 自律神経の発達のバランスの乱れ

成長期には自律神経の調整がうまくいかないことがある

  • 血液循環の問題

血流が十分に脳に届かず、立ちくらみやめまいを引き起こす

  • ストレスや生活習慣の乱れ

環境の変化や心理的な要因も影響

  • 睡眠不足や栄養の偏り

不規則な生活習慣が症状を悪化させる

  • 遺伝的な要因

家族にODの経験がある場合、発症しやすい傾向がある

これらがすべてではありませんが、こうした要因により起立性調節障害は発症すると言われています。

3.起立性調節障害はどうやって診断するの?

起立性調節障害は問診や血圧測定などを通じて診断されます。

以下のような検査が行われることが多いです。

起立性調節障害の検査
  • 起立試験

横になった状態と立ち上がった状態での血圧と心拍数の変化を測定

  • 24時間血圧測定

日中と夜間の血圧の変動を見る

  • 自律神経機能検査

心拍変動などを測定し、自律神経の働きをチェック

病院に一晩入院して検査を実施するため、子どもにもきちんと説明をした上で検査をすることが重要です。

診断が確定したら、生活習慣の改善や治療方法について医師と相談していきます。

4. 親ができるサポートはどんなものがあるの?

子どもに起立性調節障害の診断が出たときに、親としてどのようにサポートをしていけば悩まれることも多いと思います。

具体的には、

家庭でのサポートの仕方
  1. 朝の過ごし方の工夫
  2. 食事の工夫
  3. 運動の習慣化
  4. 寝る前の過ごし方の工夫

こうしたものが考えられます。

1. 朝の過ごし方を工夫する

朝の過ごし方を工夫するだけでも、起立性調節障害の症状はやわらぎます。

即効性があるものではないため、持続的に行う必要がありますが習慣化できると症状の改善につながります。

  • 朝はすぐに起き上がらず、布団の中で少しずつ体を動かす
  • 低血圧対策として、塩分と水分をしっかり摂る(スポーツドリンクや味噌汁がおすすめ)
  • 朝日を浴びる(体内時計を整えるためにカーテンを開ける)
  • ゆっくりとした動作で起きる(急に立ち上がるとめまいが起こりやすい)

こうして見ると、全然特別なものではないなと感じませんか?

しかし、起立性調節障害の子どもの場合、朝は食欲がないからと朝ごはんと食べないことがとても多く、そうした生活を続けていくうちに症状がどんどん悪化してしまったというケースが今までとても多かったです。

なので、こうしたちょっとした取り組みを毎日継続していくことから、起立性調節障害の治療を始めてみるのもおすすめです。

2. 食事の工夫

起立性調節障害の子どもの場合、朝ごはんを食べないことが多く一日を通して食事の量が少ないこともよくあります。

そうした中で、食事に対してちょっとした意識ができると症状の改善にもつながります。

  • 1日1.5〜2リットルの水分を摂る
  • 塩分を適度に取る(血圧が低い子には特に大切)
  • バランスの良い食事を意識する(ビタミンB群や鉄分を含む食材を取り入れる)
  • カフェインは控えめにする(一時的に血圧を上げるが、その後低下しやすくなるため)

こうしたポイントを押さえておくと、子どもたち自身でも気を付けることができます。

特に、低血圧タイプの起立性調節障害の子どもの場合、鉄分や塩分などが足りていなくて症状が重くなってしまうこともよくあるので、その点は気を付けてみてください。

3. 運動を習慣化する

朝、起きたタイミングで体調が悪いとそのまま一日を横になった状態で過ごしてしまう。

そんな起立性調節障害の子どもが多いのではないでしょうか。

体調が悪いときに無理に体を動かす必要はありませんが、適度な運動を取り入れることで身体のバランスを改善することにつながります。

  • 座ったまま足を動かす運動(足の筋肉を鍛えて血流を良くする)
  • 軽いストレッチや散歩(無理のない範囲で体を動かす)
  • 水中運動が効果的(水の浮力で負担を減らしつつ運動できる)

身体を動かした方がいいとわかっていても、なかなか腰が重たくなってしまって難しい。

こんな子どもも多いと思います。

そんな時には、ペットを飼っているのであれば散歩に連れて行ったり、家族で一緒に買い物に出かけたりなどちょっとした外出を取り入れるだけでも効果的です。

4. 寝る前の過ごし方の工夫

起立性調節障害の場合、朝の過ごし方だけではなく寝る前の過ごし方にも工夫が必要です。

  • 夜更かしを避ける(スマホやゲームを控え、リラックスできる環境を作る)
  • 入浴で体を温める(ぬるめのお湯に浸かることで副交感神経が働き、質の良い睡眠が取れる)
  • 寝る前のストレッチや深呼吸をする(リラックス効果が高まる)

ついつい朝起きられなくて昼前まで寝てしまうと、夜寝るのも遅くなってしまいまた朝起きられない、という悪循環に陥ってしまうことがあります。

そうした悪循環に陥らないためにも、寝る前の過ごし方を工夫してみるのもいいのではないでしょうか。

5. 学校との付き合い方はどうすればいいの?

起立性調節障害の子どもは、朝起きられないことによって遅刻や欠席が多くなりがちです。

そうした中で、先生や周囲の友達から

  • 「怠けているんじゃないの?」
  • 「サボっててズルい」
  • 「部活だけ出るなんて許せない」

こんな心ない言葉をかけられてしまうことも少なくありません。

今でこそ起立性調節障害の名前は広く知られるようになりましたが、それでもこうした誤解は今もあります。

だからこそ学校とどのように付き合っていくかを考えていくことが、子どもの心を守るためにも重要です。

1. 学校に理解を求める

起立性調節障害の診断が出た場合、学校に診断名を伝えることが理解を求めるうえでは重要です。

クラスメイトに対しても説明するかどうかは、子どもとも相談が必要ですがある程度の症状については説明しておくことで周囲の誤解を減らせます。

  • 担任の先生に病気について説明し、理解を求める
  • 遅刻・早退に柔軟に対応してもらえるよう相談する
  • 保健室登校など、無理のない登校方法を模索する

こうしたポイントを学校と話し合うことで、その子に合った対応の仕方を考えることにつながります。

2. 登校を焦らない

つい病気だとわかっていても、いつまでも横になっている子どもを見ていると小言を言いたくなくこともあるかと思います。

特に、起立性調節障害の子どもは夕方から元気に活動できる子も多いため、

「あれだけ夜はしゃいでいたのに、なんで朝になると起きられないの・・・?」

こんな風に感じて悩んでしまう親の話もよく聞きます。

  • 「毎日学校に行くこと」よりも「行ける日は行く」ことを目標にする
  • オンライン授業を活用できるなら、在宅学習の時間を作る

「学校に行くこと」を目標にしてしまうと、親子ともども疲れ果ててしまいます。

起立性調節障害はすぐに治るものではないため、気長に付き合う気持ちを作ることが大切です。

家庭だけでは抱えきれなくなったときには、スクールカウンセラーなどを活用して一緒に対策を考える体制を作るのもおすすめです。

6. おわりに

起立性調節障害は決して「怠け」ではなく、自律神経のバランスが乱れることで起こる病気です。

周囲の理解が進んでくると、当事者の子どもにとっても生活しやすい環境につながります。

子どもが安心して過ごせるよう、長い目で見守りながら一緒に向き合っていきましょう!

今回も読んでいただきありがとうございました。