学校の中で子ども達の様子を見て回っている時に、
- 授業中、ずっと座っていられずに教室中を歩き回っている
- 忘れ物が多く、持ち物の管理ができない
- カッとなりやすく、友達に手が出たり教室から飛び出したりしてしまう
このような子どもの姿を見る機会があります。
こうした子どもがいる家庭や担任から
「もしかしてADHDではないのか」
といった心配の声を聞くことも少なくありません。
そこで今回は、落ち着きがないように見えるADHDについてお話ししていきます。
Contents
そもそもADHDってどんなもの?
ADHDと聞くとみなさんどのような印象をお持ちでしょうか。
- 我慢が利かない子
- 落ち着きのない子
- だらしのない子
このような悪い印象を持たれやすいのがADHDの特徴です。
ADHDとは、
- 不注意(注意力の不足)
- 多動性(落ち着きのなさ)
- 衝動性(自分の中の衝動のコントロールの難しさ)
などの困難を抱えている障害のことを言います。
これらの困難さの現れ方により、ADHDは
- 不注意型
- 多動性・衝動性型
- 混合発現型
の3つのタイプに分けることができます。

①不注意型
物忘れが多い、気が散りやすい、物事に集中できないのような特徴があります。
あまり目立つことはないため、困っていることに気づかれにくいです。
不注意が強く症状として出てくるのは、女の子に多い傾向があります。
②多動性・衝動性型
落ち着きがなく、授業中に立ち歩いたりおしゃべりが止められなかったりします。
ささいなことでもカッとなりやすく、友達とトラブルになってしまうことも多いです。
多動性・衝動性が強く症状として出てくるのは、男の子に多い傾向があります。
③混合発現型
不注意・多動性・衝動性のすべての特性が見られるタイプです。
ADHDのおよそ8割が混合発現型と言われています。

一般的に、落ち着きのなさや注意力のなさなどは、2歳くらいから見られるものです。
しかし、家庭内で子どもと一対一で過ごしている時には、子ども自身の状態を見落としやすくなります。
幼稚園や保育園、学校などの集団生活の場に入った時に、他の子どもと比較して初めて子どもの特性が他の子どもよりも強かったと気づくパターンも少なくありません。
では、そもそもADHDの原因とはなんなのでしょうか。
ADHDの原因とは
ADHDは、親やきょうだいにADHDが見られると発症率が高いことがわかっています。
しかし、発症率が高いからといって、必ずしもきょうだいすべてがADHDになるというわけでもありません。
遺伝子の関係でADHDの可能性が高くなることもある、という感じの認識でいていただくのがいいかと思います。
遺伝子の問題以外にも、ADHDには脳の特定の部分の機能がうまく働いていないことも関係しています。
- 集中力の維持する力
- 計画して行動する力
- 感情をコントロールする力
- 短期的に記憶を留めておく力(ワーキングメモリー)
これらの働きを持つ脳の機能がうまく働いていないことが、ADHDの行動につながっていると考えられています。
こうした脳の働きの他に、ADHDの子どもはドーパミンと呼ばれるワーキングメモリーを使ったり、学習などを促したりする脳の中の物質をうまく取り込めていないことも、ADHDの特性が出てくる要因となります。
ドーパミンがうまく取り込めない、という問題に関しては薬を使った治療も選択肢に入るので、後で治療についてもお話ししていきます。

では、こうしたADHDには具体的にどのような特徴が表れるのでしょうか。
ADHDの特徴はどんなものがあるの?
ADHDの子どもは、自分をコントロールすることが苦手で、さまざまな場面でトラブルが起きやすいです。
- 堪え性のない子
- わがままな子
- 暴れん坊
のような印象を持たれることも多いので、友達とうまくコミュニケーションが取れないこともあります。
ADHDの具体的な特徴としては
- 集中力が続かない
- 忘れ物が多い
- 落ち着きがない
- 順番を待てない
- 考えて行動することが苦手
- 注意力が散漫
- かんしゃくを起こしやすい
のようなものが挙げられます。
自分をうまくコントロールできないため、TPO関係なく自分の要望を通そうとしてしまうことがADHDの特徴です。

では、こうした特徴が見られた時、どのようにADHDの診断を行うのでしょうか。
ADHDの診断はどうやるの?
ADHDの診断を受けたい場合には、
- 児童精神科
- 療育センター
のような専門医がいる病院を受診していただくのが一番です。
いきなりそこを受診するのはハードルが高い、と感じるママは
- かかりつけの小児科
- 地域の子育て相談窓口
- 地域の教育相談センター
- スクールカウンセラー
などに相談していただくのもいいと思います。
注意してほしいのは、相談機関はあくまで「相談」のみになってくるので、「診断」を求める場合には必ず専門医のいる病院を受診してください。

病院を受診する際には、
- 普段の子どもの様子をまとめたもの(家庭と幼稚園・保育園・学校場面のもの)
- 母子手帳
- 家族関係をまとめたもの(疾病歴や生活環境など)
- 子どもが学校で使っているノートや通知表、連絡帳など子どもの生活が見えるもの
のようなものを持参すると診察の流れがスムーズになるのでおすすめです。
病院によっては独自のADHDチェックリストを保護者と先生にそれぞれつけてもらって、受診の際の参考にするところもあるので、その点も確認していただくといいと思います。
ネット上でも「ADHDチェックリスト 子ども」と検索すると、いくつかヒットするのでそういったものを参考にしていただくのもいいかもしれません。

病院での診察や子どもの様子の観察、心理検査等を踏まえてADHDの診断はなされます。
すぐに診断がつく場合もあれば、診断がつくまでに時間がかかる場合もあります。
大事なことは、診断がつくことを目的にするのではなく、子どもにとって必要な支援を見つけることが目的であるという意識を忘れずにいることです。
では、実際にADHDと診断を受けた後、どのような治療が受けられるのでしょうか。
ADHDの治療方法
ADHDの治療法には、
- 薬物療法
- 行動療法
この2つが用いられることが一般的です。
①薬物療法
薬によって脳の働き方を変えることはできませんが、ADHDの原因でもお話ししたように、ドーパミンがうまく取り込めないことを薬で改善することはできます。
ADHDで使われる薬の種類は、
- コンサータ
- ストラテラ
- インチュニブ
の3種類が日本ではよく使われています。
それぞれの薬の特徴は、
- 飲む回数:1日1回
- 副作用:食欲低下・睡眠障害・頭痛・腹痛
- 効果が出るまでの期間:3回の服用で効果が現れる
- 飲む回数:1日2回
- 副作用:肝機能障害・アナフィラキシー 食欲低下や睡眠障害はない
- 効果が出るまでの期間:服用後2週間 効果が安定するまで6~8週間
- 飲む回数:1日1回
- 副作用:血圧低下・頭痛・狭心症 食欲低下や睡眠障害はない
- 効果が出るまでの期間:服用後1~2週間
のようにまとめられます。

お薬について疑問や不安があった際には、必ず納得いくまで医師から説明してもらうことが大切です。
薬物療法が始まった際には、医師の指示通りに服薬することが重要です。
症状が落ち着いたからと勝手にお薬の量を減らしたり飲まなかったりすると、症状が悪化してしまう危険性があります。
薬物療法が一生続くことは滅多にない!
行動療法と並行することによって、薬を飲まない生活も可能になる!

②行動療法
上記の薬物療法は、あくまで日常生活の困り感をひとまず解消するために使うもので、最終的な目標はお薬を使わずに自分で感情や行動をコントロールできるようになることです。
お薬を使わずにいられる状態になるためにも、行動療法と呼ばれる適切な行動の練習の積み重ねが必要となります。
以前、このブログでもお話しした応用行動分析の理論も行動療法に基づいた支援になるので、そちらも参考にしていただくといいと思います。
行動療法の実施の際に、トークンエコノミーと呼ばれるいわゆるごほうびや罰をうまく使った方法が使われることが多いです。

トークンエコノミーの方法は、
- してほしい行動としてほしくない行動を、具体的に表などに示していく
- それぞれの行動に対して、+・-の得点を決めておく
- 普段の生活の中で、決めた行動が出た時に点数を付ける
- 点数が基準に達したら、ごほうびをあげる
のようになります。
ここでいうごほうびは、いわゆる「おもちゃを買ってあげる」や「お小遣いをアップする」のようなものではなく、
- 50点溜まったら、好きなおやつを選べる
- 100点溜まったら、ゲームの時間を30分増やせる
のようなものにしていただくといいと思います。

こうした行動療法と併せて子どもの集中しやすい環境を整える、環境調整も行っていただくとより効果的なのでおすすめです。
ご家庭や学校の状況によって、取れる環境調整の方法も異なると思うので、悩んだらぜひスクールカウンセラーに相談していただくといいかもしれません。
年齢と共に多動性と衝動性は落ち着いてくる!
不注意は大人になっても残りやすいので、子どものうちから対処法を身に付けられると安心!
おわりに
今回は、ADHDについてお話ししていきました。
小学校の低学年では多動性と衝動性、中・高学年になると不注意の特性が顕著になってくるのを、普段の相談の中で見てきました。
年齢が上がることによって、多動性と衝動性が落ち着いてくるため、なんとなく問題が解決したように見られてしまいます。
根本的な解決にはつながっていないため、別の問題が出てきて困ってしまうという事例も少なくありませんでした。
なので、少しででも「気になるな」と感じましたら、気軽にスクールカウンセラーなどに相談していただくといいのではないでしょうか。
今回も読んでいただきありがとうございました。








