私は、スクールカウンセラーとして勤務する傍ら、役所の中で子育て相談を受ける仕事もしています。
スクールカウンセラーだと、学校の生活に特化した相談が多くなりますが、役所の中で受ける子育て相談は実にさまざまなものがあります。
学校では話せない学校に対する不信感や、夫婦関係の相談、子どもの発達に関する相談などがよく出てきます。
私が配属されているところは、高校生の年齢までの子どもに関する相談窓口なので、高校生の相談も時折受けることがあります。
中学生から高校生の相談で近年増えつつあるのが、ひきこもりの相談です。
不登校状態のお子さんが、外出もできなくなりそのままひきこもりになってしまうというケースが多いように感じます。
今回は、そんなひきこもりの相談についてお話ししていきたいと思います。
ひきこもりってどんな状態?
ひきこもりとは、さまざまな要因で自宅以外の生活の場が長期的に失われている状態のことを言います。
中学生や高校生の子だと、不登校状態でも友達と遊びに行ける子もいるので、そうしたお子さんはひきこもりとは呼びません。
しかし、コンビニに買い物に行くや映画を観に行くなど外出ができていても、ご家族以外とコミュニケーションを取る機会がなければ、ひきこもりと呼ばれてしまう場合もあります。
「うちの子は近所に買い物に行けているから大丈夫」
「アニメのイベントに出かけることもあるからうちの子はひきこもりじゃない」
と、考えていたママもいるかもしれません。
大事なことは、お子さんが家族以外の誰かと定期的にコミュニケーションを取る機会があるかです。
家族以外の誰かと何か特別なコミュニケーションが必要、というわけではありません。
お子さん自身が、家族以外の誰かと少しでも繋がっている状態がひきこもりの脱却には重要な要素となります。
ひきこもりの相談ってどういうことをするの?
ひきこもりの相談に来てもらった際に、私が実際に行っている支援方法は、
- 子どもと自然と会話ができる関係づくり
- ひきこもりの居場所支援を行っている機関の情報提供
- 継続的に相談に来てもらい、経過をフォロー
の3点が主に行っている支援です。
①子どもと自然と会話ができる関係づくり
ひきこもりのお子さんのことで、私のところに相談に来てくれたママたちにまず伺うことは、ご家庭の中でお子さんとどのくらいお話ができているか、ということを確認させてもらっています。
たいていの場合、ほとんど自室に籠っているので会話は全くない、という状態がほとんどです。
なので、まずは日常会話をできるようになるところから取り組んでもらうことになります。
実際にどういう風にしていけばいいかは、ご家庭の状況によってさまざまではありますが、基本的には変に気を使い過ぎず、何でもないことの声掛けをしていただくことから始めてもらうことが多いです。
- 今日の天気
- TVの内容
- ママたちの日常
このような些細な話題からで構いません。
自然にお子さんに声掛けできる状態になっていただくことが目的なので、お子さんの反応がなくても声をかけてみるということを意識していただくといいかもしれません。
②ひきこもりの支援機関の情報提供
相談を継続していく中で、少しずつお子さんに変化が出てきた時に、居場所を求めるような動きが出てくることがあります。
相談だけではなく社会生活に復帰できるような活動をしたい、という希望が出てきた時に地域にある、ひきこもりの居場所支援を行っている機関の情報提供を行います。
インターネット等でも情報は集められるかと思いますが、相談に来ていただけると事前にどんな場所なのかをリサーチすることも可能だと思います。
また、相談に来ていただいた方の了解を得て、支援機関と情報共有をすることもできるので、よりニーズに即した支援を行ってもらえるように働きかけをすることができるのも利点です。
実際にお子さんが支援機関に行けるかはやってみないとわからないですが、ママたちが
「こんな場所があるんだ」
と認識しているだけでも気持ち的には違うのではないでしょうか。
③経過のフォロー
②で支援機関の情報提供とお話ししましたが、支援機関のご案内をしたら一切こちらではフォローしない、ということではありません。
お子さんを支援機関に連れていきたいけど、どのようにしていけばいいのかわからない、というパターンが非常に多いので一緒にどのように連れていけるか作戦を立てています。
具体的には、支援機関によっては曜日ごとに活動内容が異なるため、お子さんが興味を持ちそうな内容の活動がないかを探したり、支援機関に限らずとも外出できるきっかけがないかを話し合ったりします。
それ以外にも、日々の様子を聞かせてもらいママたちが気づきにくい変化についてお伝えしていくこともあります。
そうした変化をこちらからお伝えしていくうちに、お子さんがさりげなくお家のお手伝いをしていたことに気付けるようになったママもいました。
ご家族の中でのかかわりだけでは行き詰ってしまうことが多い中で、相談に来ていただいて少しでも閉塞感が和らいだらいいなと常々考えています。

おわりに
今回は、ひきこもりの相談についてお話ししていきました。
今まで相談を受けていた中で、劇的に変化したケースというものはほとんどありません。
どのケースも緩やかに一進一退を繰り返しながら進んでいきました。
それでも、何か変化を求めて相談に来てくれたママたちのためにできる限りの支援をしてきたつもりです。
ひきこもりのお子さんがいると、家の中の雰囲気が暗くなりがちだと思います。
変化のきっかけになるかはわかりませんが、相談窓口に相談に行くことで解決の糸口が見つかればいいなと日々感じています。
今回も読んでいただきありがとうございました。
また次回も読んでもらえると嬉しいです。