中学校の不登校の相談の中で、
- 「起こしてもなかなか起きてこなくて困っている」
- 「午前中はずっと寝ているのに、午後からは遊びまわっている」
- 「朝起きられないから学校にも遅刻してしまうか、ほとんど行かない」
のような相談を受けることがよくあります。
こうした相談の中でよく出てくる言葉が、「甘えている」や「怠けている」、「だらしがない」といったものです。
しかし、本当に甘えや怠け、だらしなさからこのような状態になっているのでしょうか?
そこで、今回は朝なかなか起きられないといった症状がある時に疑われる、起立性調節障害についてお話ししていきます。
起立性調節障害ってどんな病気?
起立性調節障害とは、起きた時にめまいや動悸、失神などが起きる自律神経の病気のことを言います。
具体的な内容は、
- 症状
- 原因
- 治療
- 予防
にわけてお話ししていきます。
①症状
起立性調節障害の主な症状としてあげられるのは、
- 朝なかなか起きられない
- 起きた時にめまいが起きる
- 朝起きると動悸がする
- 長時間立っているとめまいがひどくなる
のようなものが挙げられます。
こうした症状を小学校高学年から中学生などの思春期の子どもに、発症することがよく見られます。
多くの子どもは、程度の差はありますが、起立性調節障害のような症状を訴えることがよくあるので、こうした知識を知っておくと役立つことがあるかもしれません。

②原因
自律神経のコントロールがうまくいかないことが原因と言われています。
自分の意思で思うようにコントロールができないため、周囲からの理解を得られにくいのもこの病気の特徴です。
また、
- 成長期に伴うホルモンバランスの乱れ
- 精神的なストレス
- 運動不足
なども起立性調節障害を引き起こす要因と言われています。

③治療
自律神経の病気ということで、なかなか周囲からの理解が得られず孤立してしまうことにより、さらに症状が悪化ししてしまうという悪循環に陥ってしまうことがあります。
その状態が慢性化すると不登校やひきこもりなどの危険性も高まるため、周囲のサポートが必要不可欠です。
血圧を上げる薬や体内時計を整える薬などを使った薬物療法をすることもありますが、まずは日常生活の改善を始めることが治療の第一歩です。
特に、意識してほしいポイントは
- 水を2L、塩分を10gを目安に摂取する
- 日中はなるべく寝転がらない
- ゆっくりと立ち上がり、なるべく長時間は立たないようにする
- ストレスの少ない環境調整をする
の4点です。
特にストレスの少ない環境調整をすることによって、子ども自身が日常生活の改善をしていきたい、というモチベーションを高めていくことがとても重要です。

規則正しい生活とストレスの少ない環境調整が重要!
④予防
治療とも関係しているのですが、予防のためにも規則正しい生活を送ることはとても重要です。
慢性化しないように、初期の段階でストレスを減らす取り組みをしたり、生活の改善を行ったりできれば数ヶ月で症状は軽減します。
スクールカウンセラーとして子ども達の話を聞いていると、
- 朝起きられないから朝ご飯を食べずに学校に来る
- 体育の授業以外では運動をしない
- ご飯よりもお菓子を食べる方が多い
- 学校でトイレに行きたくないので、あまり水分は取らない
のような言葉が出てくることも多くあります。
こうした生活を続けていくうちに、自律神経の乱れにつながっていく危険性が大いにあるので、日ごろからこうした病気について家庭で話しておくのもいいかもしれません。
また、運動不足も病気の発症に関係しているため、日常的に体を動かす習慣をつけられるといいと思います。

では、起立性調節障害かどうかを知るためにはどこに相談に行ったらいいのでしょうか?
起立性調節障害はどこに相談に行ったらいいの?
起立性調節障害の診断を受けるためには、基本的に病院の受診が必要です。
専門医のいる総合病院等に相談に行くのもいいですが、最近ではかかりつけの小児科等でも起立性調節障害の相談をできるところが増えてきています。
また、あえて診断を受けなくても対応策の相談ができればそれでいい、ということでしたらお住まいの地域の子育て相談窓口や学校にいるスクールカウンセラーなどに相談するのも効果的です。
この病気の治療には、周囲の理解が必要不可欠なので、子どもに関係する人には協力をお願いできると安心だと思います。
家族からの働きかけだけで環境調整をするのが難しい、という場合には医師やスクールカウンセラーなどの専門家の協力を要請すると話がスムーズにいくことも多いです。
気になる時は専門家に相談!
みんなで協力してサポートできる体制づくりを心がける!

今までかかわった起立性調節障害のケース
スクールカウンセラーとして勤務している中で、起立性調節障害の相談は毎年必ずあります。
ほとんどの子どもが不登校も併発していて、家族も疲弊してしまっていることがとても多かったです。
特に、病気だということはわかっていても、夕方になると元気いっぱいに活動している子どもの姿を見ると、何とも言えない複雑な気持ちになるというママからの相談をよく受けます。
身近な家族ですらそのような反応になってしまうとすると、学校の先生や友達などはもっと顕著な反応になってしまうと思います。
こうした反応を子ども自身もよくわかっているため、自己嫌悪に陥って余計に症状が悪化するという悪循環になってしまうこともありました。
「病気だから仕方ない」
こんな風に受け入れるのにも限度があります。
しかし、そうした葛藤を子ども自身にぶつけてしまうとあまりいい方向には進みません。
そうした時に、ママ達が自分の葛藤を吐き出せる相手を見つけておけるかどうかがとても重要だと思います。
1人で抱え込まずに、誰かと一緒に考えながら対応できた方がきっと負担は少ないはずです。
私がこれまでかかわってきたケースの中でも、そうした葛藤を一緒に共有して少しずつ改善に向かっていったこともありました。
後は、できれば子どもとスクールカウンセラーとで話ができる関係を作れると、改善までの流れもスムーズになった印象があります。
どちらか一方の頑張りだけではなく、一緒に改善に向けて進んでいける関係を作れると、負担が偏らなくていいのではないでしょうか。

おわりに
今回は起立性調節障害についてお話ししていきました。
周囲からの誤解を受けやすく、いつ治るかもわからないこの病気と付き合っていくのはとても苦しいことです。
1人でも理解者が増えれば、この病気を抱えている子どもにとってはとても大きな励みとなります。
こうした知識が広まって、周囲からの無理解に苦しむ子供が一人でも減ることが私の願いでもあります。
今回も読んでいただきありがとうございました。