スクールカウンセラーとして教室の様子を見て回っている時に
- 椅子に座る姿勢が崩れている
 - 身体を揺らしながら座っている
 - 力の加減が難しく、つい力が強くなってしまう
 - 音や光などの刺激に過敏になっている
 
こんな子どもの姿を見ることがあります。
それ以外にも、筆圧の強弱がうまくいかなかったり細かい作業が苦手だったりなどの不器用さも見られることがあります。
もしかしたら、そういった子ども達の気になる姿は、子どもの感覚がうまく結びついていないからかもしれません。
そこで今回は子ども達の感覚に働きかけて、行動の改善につなげていく感覚統合についてお話ししていきます。
Contents
そもそも「感覚」ってなに?
普段の生活の中で、光や音、においなどさまざまな刺激に触れて私たちは生活をしています。
そうした外からの刺激を身体に受け取るはたらきのことを一般的に感覚と言います。
感覚と聞いて頭に思い浮かぶのは、五感と呼ばれる触覚・味覚・嗅覚・聴覚・視覚ではないでしょうか。
実は、そうした感覚以外にも
- 固有受容覚
 - 前庭覚
 
と呼ばれる大事な感覚が人の身体には備わっています。
人の身体の感覚の基礎と呼ばれるのは、上記の固有受容覚と前庭覚、触覚の3つの感覚です。そこで、具体的にどんなものかをお話ししていきます。

触覚
触覚は、皮膚を通して触ったり触られたりした時に感じるものです。
- 情緒の安定:スキンシップや毛布にくるまれた時に安心できる
 - 識別:触って5円玉と100円玉の違いがわかる
 - 防衛:熱いものに触った時など危険を感じたら離れられる
 - ボディイメージの把握:障害物を避けたり隙間を通れるか判断できたりする
 
皮膚からの感覚を通して、私たちは自分の身体がどのように外部とつながっているのかを把握することができます。

固有受容覚
固有受容覚は、自分の身体の位置や動き、力の入れ具合がどうなっているかを感じるものです。
- 力の加減:卵などの壊れやすいものは優しく、重たいものは力強く持つ
 - 情緒の安定:緊張している時の貧乏ゆすりや歯を食いしばって気持ちを落ち着かせる
 - 運動のコントロール:やりたいことに合わせて関節の動きを調整できる
 - ボディイメージの把握:後ろ手に髪を結んだりベルトを通したりできる
 
手足がどのように動いているかを把握するのにとても大切な感覚で、この感覚があることによって相手の動きを真似したりリズムに合わせて動かしたりすることができます。

前庭覚
前庭覚は、自分の身体のバランスやスピード、回転を感じるものです。
- 姿勢を保つ:重力に負けないように身体の姿勢を保とうとする
 - バランスをとる:平均台などで体が傾いているかを素早く判断できる
 - 目覚めの調節:眠気を感じたら頭を振ってすっきりさせる
 - ボディイメージの把握:自分の身体がどんな動きができるのかを把握する
 
前庭覚は、自分の身体のバランスを把握するのにとても大切な感覚で、この感覚がうまくはたらくことによって姿勢をまっすぐに保つことができます。

では、これらの感覚がうまくはたらかないとどうなってしまうのでしょうか。
感覚がうまくはたらかないとどうなるの?
上記でお話しした3つの感覚は感覚の基礎とも呼ばれる大切なものです。
そうした感覚がうまく働かないと身体がうまく使えないなどの弊害があります。
触覚がうまくはたらかない
- ささいな刺激に過敏になる
 - 刺激に鈍くなり、危険に気づかない
 - 必要以上に友達をべたべたと触る
 
固有受容覚がうまくはたらかない
- 力加減がわからず、友達にケガをさせてしまう
 - 身体の使い方が不器用で、動作がぎこちない
 - 身体の位置の把握が苦手で、食事をこぼしてしまう
 
前庭覚がうまくはたらかない
- 椅子を斜めにするなど不安定な状態で座りたがる
 - 机をがたがたとさせるのを止められない
 - 回転いすでいつまでも回り続ける
 

このように感覚がうまくはたらかないことによって、子どもの行動が落ち着きがなく気になるものに見えてしまう危険性があります。
では、これらの感覚をうまくはたらかせるためにはどんなことをすればいいのでしょうか。
感覚の交通整理、「感覚統合」って何?
私たちは、普段の生活の中でさまざまな刺激を受けています。
こうした刺激を全部同じように受け止めていたら生活はままなりません。
そこで、人間の脳は外からのさまざまな刺激を交通整理のように分類や整理をして私たちに伝えてくれています。
このような感覚の交通整理のことを統合と呼んでいます。
統合がうまくいかないと、次々とやってくる刺激に対してどのように反応すればいいのかわからなくなってしまい、混乱状態に陥ります。
しかし、感覚の統合がうまくいくと状況に合わせて感覚の調整や注意の向け方を変えられ、周囲の状況の把握とそれをふまえた行動ができるようになります。

感覚の統合がうまくいかないとどうなる?
感覚の統合がうまくいかないと、
- 感覚に敏感になる
 - 感覚に鈍感になる
 
のどちらかの姿が見られます。
- 教室のざわめきがひどい騒音に感じる
 - 少し触れられただけで、強い痛みを感じる など
 
- 何度も高いところから飛び降りる
 - 壁などに張り付いて動かない など
 
特に感覚が鈍感な子どもの場合、日常の刺激では物足りなくなってしまい、はたから見ると危険な行動を繰り返してしまうことがあります。

では、感覚の統合がうまくいかない子どもに対してどのように支援をしていけばいいのでしょうか。
感覚統合にはどんなことをすればいいの?
感覚統合は療育センターなどの専門機関で受けられます。
以前、このブログでもお話ししたOTやPTが感覚統合を促すものになっています。
感覚の統合がうまくいくようになると、子どもの行動も落ち着いたものに変わってくることも多いので気になる方は一度療育センターなどを受診してみるのもおすすめです。
ご家庭では、
 
 
のような刺激を取り入れられるおもちゃを活用してみるのもおすすめです。
それ以外にも、
 
 
のような身体への刺激を促すものもいいかもしれません。
おわりに
今回は感覚統合についておはなししていきました。
生活の中で受けるさまざまな刺激を、私たちは無意識のうちに取捨選択しています。
しかし、中にはうまく取捨選択ができずに苦しんでいる人も少なくありません。
- これぐらいの刺激でおおげさな…
 - こんな刺激も気づかないのか…
 
のように感じる子どもの姿の背景にも、もしかしたら感覚の統合がうまくいっていないのかもしれないと意識していただくだけでも変わってくると思います。
ご家庭の中の様子で気になることがあったら、専門機関でもいいですしお近くのスクールカウンセラーにも相談していただけたら嬉しいです。
今回も読んでいただきありがとうございました。








